【医師コメントつき】ヘアトニックに育毛効果はある? 成分・発毛治療との違い・注意点を解説
抜け毛や毛量の減少が気になり「何とかしよう」と思い立ったとき、気軽に試しやすいヘアトニック。安価なうえドラッグストアなどで簡単に入手できるため大変手軽な頭皮ケアアイテムですが、“本当に育毛効果を期待できるのか”を不安に思う方は少なくないでしょう。薄毛治療などと比べてみると、果たして本当に髪の毛に良いのか…? と疑ってしまうかもしれません。
今回のAGAタイムスは、そんなヘアトニックの育毛効果ついて解説していきます。
ヘアトニックには育毛効果あり
結論からいうと、ヘアトニックには育毛効果が期待できます。ヘアトニックには大きく分けて「化粧品」と「医薬部外品」に分類される商品がありますが、育毛を目的とした有効成分が含まれているヘアトニックは医薬部外品に分類されているもののみです。
しかし、化粧品に分類されるヘアトニックも全く育毛効果が期待できないわけではありません。本来ヘアトニックとは頭皮環境を健やかに保つことを目的としている商品であるため、化粧品のヘアトニックであっても正常な頭皮環境を整えて、間接的に育毛を促す可能性はあると考えられます。また髪の毛にハリやコシを与える成分などが含まれている商品もあることから、健やかな髪の毛を維持するためにも役立つといえるでしょう。
しかしながら、より高い育毛効果を期待したいのであれば、やはり育毛環境を整えるために有効な成分を含んだヘアトニックを選ぶのがおすすめです。ひと口に“育毛効果を促す成分”といってもその種類は多く、作用もさまざまです。どのような成分を含む商品を選べばよいか分からないという方のために、次からはヘアトニックに含まれる主な有効成分について解説していきます。
ヘアトニックに含まれる育毛成分
ヘアトニックは、主に頭皮に爽快感を与える清涼成分や頭皮のうるおいを守る保湿成分を含んでいますが、医薬部外品のヘアトニックの場合はそれに加えて抗炎症作用を持つ成分や殺菌効果を持つ成分、血行促進する成分などの有効成分が含まれています。
なかでも、育毛効果が期待できる主な有効成分は以下の通りです。
- ◯酢酸トコフェロール
- ・概要…ビタミンE誘導体。酢酸とトコフェロール(ビタミンE)のエステル(※)
- ・効果…皮膚の血行促進、皮膚温を上昇、微小血管の透過性亢進を抑制、皮膚の角質防止、過酸化脂質の障害抑制、保湿効果、メラニンの沈着抑制、抗炎症作用、発毛促進効果、紫外線防御効果、化粧品の安定性向上など
- ◯パンテニルエチル
- ・概要…パンテノールのエチルエーテル。パンテノール同様パントテン酸となり効果を発揮する
- ・効果…補水・保湿、創傷治癒、抗炎症、皮脂分泌の抑制、毛母細胞の活性促進
- ◯ニコチン酸アミド
- ・概要…ビタミンB群の一種。別名「ナイアシンアミド」または「ビタミンB3」とも呼ばれる
- ・効果…体内における酸化還元反応のサポート、皮膚や粘膜を正常に保つ、血行促進
- ◯t-フラバノン
- ・概要…西洋オトギリソウ内にある「アスチルビン」という成分を手がかりに『花王 株式会社』が独自に開発した有効成分
- ・効果…TGF-β(※)の活性化を抑制し髪の毛の成長期を保つ、毛母細胞の活性化を促す、髪の毛の接着分子を増やし抜け毛を防ぐ
- ◯アデノシン
- ・概要…ヒトにも存在する生体内成分。毛髪成長の司令塔である「毛乳頭」に直接作用し、発毛を促す『株式会社 資生堂』独自の有効成分
- ・効果…血行促進、毛乳頭細胞表面の受容体に直接作用して発毛促進因子「FGF-7(※)」の産生を高める
※有機酸、もしくは無機酸とアルコールから水を抜いて生成した(脱水縮合)した化合物。
※毛母細胞に作用して、その分裂・増殖を抑制し髪の毛の成長を妨げるタンパク質
※毛母細胞の受容体に作用して細胞増殖を高め、髪の毛の成長を促す発毛促進因子
このように、ヘアトニックに含まれる有効成分はさまざまな角度から頭皮にアプローチして育毛効果を発揮します。
ヘアトニックを使用する際の注意点
頭皮環境を整え、さまざまな有効成分により育毛効果を得られるヘアトニックですが、使用の際には注意すべき点もあります。
■アルコール成分が刺激になる可能性がある
爽快感を与える清涼成分として配合されるアルコール成分「エタノール」は、重大な皮膚刺激の報告こそないものの、皮膚炎を有する場合において中程度の皮膚刺激が起こる可能性が示唆されており、頭皮の刺激となる可能性があります。
また皮膚が過敏なため、なるべく刺激になりにくい商品を使用したいという場合は、アルコール成分が含有されていないものを選ぶのがおすすめです。
■スプレー式、ノズル式は液だれに注意
ヘアトニックは容器の形状にも種類があり、主にエアゾール式・スプレー式・ノズル式の3種類に分かれます。
スプレー式やノズル式は噴出される液剤のミストが粗い、また液剤が大量に出やすいなどの理由から液だれしやすいのが難点。対して、噴射力が高くミストの細かいエアゾール式は比較的液だれしにくいため、ヘアトニック初心者の方はエアゾール式を選ぶのがおすすめです。
■清潔でない状態や濡れたままの頭皮には使用しない
細かいフケや皮脂などで頭皮が汚れていると、有効成分が頭皮に浸透しにくくなります。また、頭皮が濡れたままだと塗布した液剤が水で薄まり効果を得にくくなる可能性もあるため、ヘアトニックは洗髪後ドライヤーで乾かした状態の頭皮に使用するよう心がけましょう。
■パーマやヘアカラーを施した直後は使用を避ける
パーマやヘアカラーに使用される液剤が頭皮に付着すると、刺激物質により接触皮膚炎などを発症してしまうことがあります。パーマやカラーリング後の皮膚炎といえば、主に頭皮の激しい痛みや腫れなどのかぶれをイメージする方が多いため「自分は大丈夫」と思っている方が多いかもしれません。
しかし、多少のかゆみや赤みなども皮膚炎の症状である可能性があります。軽度の症状であっても何がきっかけとなって悪化するか分からないため、パーマやヘアカラーを施した直後の頭皮ケアには注意が必要です。
少しでも頭皮に異常が見られる場合はもちろんですが、とくに大きな異常はなくても頭皮が過敏になっている可能性もあるのでパーマやヘアカラーを施した直後は念のためヘアトニックの使用を避けることを推奨します。
■明らかに脱毛が起こっている場合は別の方法を検討する
育毛効果のある有効成分を含んだヘアトニックは、あくまで頭皮を健やかに保ったり太くハリのある髪の毛を育むためのものであり、発毛させたり脱毛を止めたりするような効果は期待できません。
したがって、すでに薄毛の進行が見られる場合はヘアトニックなど育毛効果を有するアイテムでのケアではなく、発毛効果や脱毛の抑制効果が期待できる薬剤を用いた治療を施す必要があります。
この「育毛」と「発毛」の違いがいまいち分からないという方も、これらの役割や違いについて知っておきましょう。
育毛効果と発毛効果の違い
ヘアトニックや育毛剤などの口コミで「薄毛が治らない」「髪の毛が生えないので効果なし」という評価が多く見られるように、育毛と発毛についてどちらも「髪の毛が増える」あるいは「髪の毛は生えてくる」と認識している方は少なくありません。
「育毛」は今ある髪の毛に働きかけ、成長しきれず途中で抜けてしまいそうな細く短い髪の毛や加齢、血行不良、生活習慣の悪化などによってハリやコシを失った髪の毛を健やかな状態に導くケアのことを指します。
対して「発毛」は生えてこなくなった髪の毛の毛根に働きかけ、発毛機能を活性化させる治療です。毛根は休眠したり、死んでしまうことで髪の毛を生やすことができなくなります。そのため、まずは毛根の状態を調べる検査を施し、休眠状態であればその人に合った治療法で毛根を再活性化させることが可能です。
このように育毛と発毛の意味合いには明確な違いがあります。
先述したようなヘアトニックや育毛剤はあくまでも頭皮ケアのサポート的な役割を担うものであり、積極的に使用を勧めるものではありません。頭皮環境をよくするために最も大切なことは、洗髪・髪の乾燥・保湿です。育毛剤のように様々な成分が含有されているものは頭皮トラブルの原因にもなり得るので注意が必要です。
ご使用のヘアトニックや育毛剤により頭皮環境が改善し、髪のコシや艶が改善するようであれば継続使用してもよいでしょう。ヘアケアにより頭皮環境が整えば、間接的に発毛効果を促し薄毛改善のサポートをすることもあります。しかし、それらはあくまで今ある髪の毛を強くし健やかな状態を維持するものなので、脱毛が進行しており、発毛効果を期待する方には向いていません。脱毛の進行を改善したい方は、発毛効果のある薄毛治療を行う必要があります。一方でヘアトニックや育毛剤は「頭皮の乾燥が気になる」「髪の毛のハリ艶が悪い」という方などにおすすめです。
【薄毛治療にも有効性を示す育毛成分】
薄毛治療の効果については、ひとつの指標として日本皮膚科学会によって作成された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」があります。このガイドラインは国内で発毛に効果があると認められ、実際に使用されている成分について科学的根拠に基づき分類・ランク付けをしています。
評価は5段階で、A(行うよう強く薦められる)・B(行うよう薦められる)・C1(行うことを考慮してもよいが根拠がない)・C2(根拠がないので薦められない)・D(行わないよう薦められる)と分類しています。
前述したヘアトニックに含まれる有効成分のうち「アデノシン」と「t-フラバノン」のみがこのガイドラインに記載されています。
有効成分 | 評価【男性型脱毛症】 | 評価【女性型脱毛症】 |
---|---|---|
アデノシン | B | C1 |
t-フラバノン | C1 | 有効性を示す根拠に乏しい |
本来薄毛治療に最適とされるのは、髪の毛を生やしたり薄毛の促進を抑えたりなど“発毛効果が期待できる有効成分”です。そのため、ヘアトニックに含まれる有効成分の評価は上記の通り全体的に振るわない成績となっています。しかし、このガイドラインのラインナップに含まれているという点では、数ある育毛有効成分の中でも高い効果が見込めることが示唆されているのではないでしょうか。
発毛治療を受けたい方はAGA治療専門クリニックへ
冒頭で説明した通り、ヘアトニックはあくまで予防的に使用する目的のものであり、薄毛の改善に適したヘアケアアイテムではありません。抜け毛を防ぐためのケアとして取り入れることは問題ありませんが、すでに薄毛が深刻化しつつある場合は早めに診察を受けて原因を特定し、適切な治療を受けるべきでしょう。
AGAヘアクリニックは、患者さま一人ひとりの原因に合わせて適切な治療を提案しております。また診察や相談は何度でも無料なので、これまで薄毛治療を受けたことがなく不安だという方でも安心して通院いただけるクリニックです。すこしでも薄毛や抜け毛などの症状が気になる場合は、お気軽に相談しにいらしてください。
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