【医師が教える】ナッツが体や髪の毛に良いとされる理由
アーモンドやピーナッツなどのナッツ類は、そのまま食べたり料理や菓子に使用したりと、国内でも比較的ポピュラーな食べ物といえます。脂質が多く、健康とは結びつかない印象のナッツ類ですが、ナッツ類には体や髪の毛に良い影響を与える栄養素が豊富に含まれているといわれています。今回のAGAタイムスは、ナッツ類に含まれる栄養素がどのように健康や髪の毛に影響しているのかを解説します。
目次
ナッツが髪の毛に良いとされる理由
アーモンドやヘーゼルナッツ、くるみ、ピスタチオなどのナッツ類には脂質が多く含まれています。脂質は“摂取すると太る”というイメージが一般的ですが、ナッツ類に含まれる脂質は良質な脂質であるため、健康効果が期待できるといわれています。またナッツ類には様々なビタミン類や食物繊維が含まれているため、抗酸化作用や腸内環境を整える作用があるとされています。
また髪の毛に良いとされる栄養素が豊富に含まれているといわれていますが、ナッツ類を食すだけで発毛効果が得られたり育毛効果が著しく活発になったりすることはありません。丈夫な髪の毛を育むためには体の健康状態が良好であることが重要だとされているため、ナッツ類に含まれる様々な栄養素を摂取することによって体の健康効果に役立てることができ、間接的に髪の毛にも良い影響を与えるという程度に捉えておくとよいでしょう。
ナッツの種類と栄養素
ナッツには様々な種類があり、それぞれに含まれる栄養素も異なります。
◯アーモンド
- ◆28gあたり
- エネルギー:163kcal
- 全脂肪:14.0g
- 一価不飽和脂肪酸:8.8g
- 多価不飽和脂肪酸:3.4g
- 食物繊維:3.5g
扁平な形が特徴的なアーモンドは世界で最も大量に利用されているナッツの種類だといわれています。
アーモンドの主成分は「不飽和脂肪酸」に分類される脂質です。そのほかにもタンパク質やカルシウム、鉄分などが含まれています。またナッツ類のなかでも特にビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEは抗酸化作用が高く、生活習慣病の予防など様々な健康効果が期待できるといわれている栄養素の一種です。さらにアーモンドには整腸作用を有する不溶性食物繊維も豊富に含まれており、日本ではスーパーフードにも認定されています。
◯ピーナッツ
- ◆28gあたり
- エネルギー:161kcal
- 全脂肪:14.0g
- 一価不飽和脂肪酸:6.9g
- 多価不飽和脂肪酸:4.4g
- 食物繊維:2.4g
そのまま食べるだけでなく料理や菓子の材料として使用されることも多いピーナッツは国内での生産量も多く、産地は主に千葉が占めています。アーモンドと同様にピーナッツにも脂質が多く含まれており、約20%が飽和脂肪酸、約80%が不飽和脂肪酸であるとされています。また様々な健康効果が期待できるビタミンB群やビタミンEが豊富に含まれているほか、カリウムやカルシウム、鉄分や亜鉛などのミネラル類もバランス良く含まれています。
◯ピスタチオ
- ◆28gあたり
- エネルギー:158kcal
- 全脂肪:12.6g
- 一価不飽和脂肪酸:6.6g
- 多価不飽和脂肪酸:3.8g
- 食物繊維:2.9g
縦に割れた硬い外殻に包まれているピスタチオは「ナッツの女王」と呼ばれるほど栄養価が高いとされています。ピスタチオには食物繊維やカリウム、ビタミンB1、鉄分などあらゆる栄養素が豊富に含まれているため、様々な健康効果が期待できるといわれています。また不飽和脂肪酸が豊富に含まれているほか、ファイトケミカルのルテインやβ-カロテン、ゼアキサンチンが多く含まれているという特徴があります。
◯クルミ
- ◆28gあたり
- エネルギー:175kcal
- 全脂肪:16.7g
- 一価不飽和脂肪酸:4.3g
- 多価不飽和脂肪酸:9.9g
- 食物繊維:1.9g
独特の食感を持つクルミは栄養価が高いことからスーパーフードにも認定されています。クルミは栄養密度が高く、総脂肪中の不飽和脂肪酸が占める割合が高いとされており、ナッツ類の中で最も多くオメガ3(n-3系)脂肪酸を含むといわれています。また脂質のほかにもビタミンEやビタミンB群、マグネシウム、亜鉛、銅などのビタミン類やミネラル類が豊富に含まれています。
◯カシューナッツ
- ◆28gあたり
- エネルギー:163kcal
- 全脂肪:13.1g
- 一価不飽和脂肪酸:7.7g
- 多価不飽和脂肪酸:2.2g
- 食物繊維:0.9g
カシューナッツはそのまま食べたり菓子に使用されたりするほか、中華料理では炒め物などにも使用されます。ナッツ類の中で最も脂質が少なく、植物性のタンパク質が多く含まれていることが特徴です。そのほかにもビタミンKや銅、マグネシウムなどの栄養素も豊富に含まれています。
◯マカダミアナッツ
- ◆28gあたり
- エネルギー:204kcal
- 全脂肪:21.5g
- 一価不飽和脂肪酸:16.7g
- 多価不飽和脂肪酸:0.4g
- 食物繊維:2.4g
主にハワイで生産されているマカダミアナッツは脂質を多く含むため歯ごたえが脆く、しっとりとした食感が特徴です。栄養素は脂質が大部分を占めますが、その中でも不飽和脂肪酸が約80%と、ほとんどが良質な脂質であるため美容効果が期待できるといわれています。またマカダミアナッツの脂質は無色無臭であるため化粧品に使用されることもあります。
ナッツの魅力は「不飽和脂肪酸」にある
ほとんどのナッツに含まれている脂質の一種に「不飽和脂肪酸」があります。このナッツに含まれる不飽和脂肪酸は主に、動脈硬化や高血圧を予防する効果、血栓症を予防する効果、アトピー性皮膚炎を改善する効果、視機能の改善を助長する効果などがあるといわれています。
“良質な脂質”といわれる不飽和脂肪酸が持つ様々な働きが体にあらゆる影響を与えることから、不飽和脂肪酸はナッツに含まれる栄養素の中でも注目度が高い栄養素であるといえるでしょう。
ナッツの健康効果
以前、ナッツは脂質が高いため健康に悪影響であると考えられていました。しかし様々な研究によりナッツに含まれる不飽和脂肪酸が身体にとって有益であるという論文が多く見られるようになりました。そのため近年では、習慣的なナッツの摂取が健康的な食事として考える人もいます。
不飽和脂肪酸は大きく分けて「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」の2種類があります。一価不飽和脂肪酸にはミリストオレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸などがあります。一方で多価不飽和脂肪酸は体内でほとんど生産されないことから「必須脂肪酸」とも呼ばれており、「n-3系」と「n-6系」に分類されます。
このうちナッツ類に多く含まれているのは一価不飽和脂肪酸で、中でも最も豊富に含まれているのは「オレイン酸」です。オレイン酸には善玉コレステロール(HDL)を減少させずに悪玉コレステロール(LDL)を減少させる働きがあると報告されています。悪玉コレステロールが増加すると血管の狭窄を招き、高血圧や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病を引き起こしやすくなります。そのためナッツに含まれるオレイン酸を摂取することは生活習慣病の予防や様々な健康効果に繋がる可能性があります。
また、ある研究では「アトピー性皮膚炎患者にn-3系多価不飽和脂肪酸を含む食品を投与した結果、皮膚症状の改善がみられた」との報告があります。ただし、あくまでも報告があるというだけで、現時点でアトピー性皮膚炎に対する確立された治療法ではありません。
ナッツが髪の毛に与える影響
ナッツに豊富に含まれるオレイン酸を摂取することで中性脂肪や悪玉コレステロールが減少することが報告されているのは上述の通りです。中性脂肪や悪玉コレステロールが減少することで血管が狭窄している症例では、血流が改善することが考えられます。血流が悪化していることで栄養素や酸素が毛根に十分に届いておらず育毛状況が悪化していた場合には、いくらか育毛が促進される可能性もあるかもしれません。
またナッツには脂質のほかにも様々な栄養素が含まれています。良質な脂質やビタミン類、ミネラル類をバランス良く摂取することは健康的な体づくりに繋がることが考えられます。健康的な体を維持することは正常な育毛を促すために重要であるため、ナッツにより普段不足しがちな栄養素を補うことで髪の毛にも良い影響を与える可能性があります。
ナッツで「抜け毛」は予防できない
ナッツの栄養素を日常的に摂取することで、育毛の促進に期待が持てる場合もあるかもしれません。しかし、ナッツの摂取だけで「薄毛」や「抜け毛」を予防できることはほとんどありません。栄養の偏りや栄養不足により抜け毛が助長されている場合は、栄養バランスの良い食生活を送ることで改善できる可能性がありますが、それほど多くはありません。抜け毛の原因が生活習慣によるものでない場合には、生活習慣の見直しだけで改善していくことは難しいでしょう。
成人男性の場合、抜け毛の原因の多くはAGA(男性型脱毛症)です。AGAによる薄毛や抜け毛は生活習慣だけでなく主に男性ホルモンが影響していることがわかっています。
AGAとは
AGAは成人男性に多く見られる脱毛症の一種です。現在、薄毛や抜け毛に悩む男性のほとんどがAGAであることがわかっています。AGAによる薄毛や抜け毛の症状は、主に男性ホルモンに起因して生じます。主に額の生え際から薄毛が進行するパターン、頭頂部のつむじ周辺から進行するパターンが多いですが、その両方が同時に進行するパターンなどもあります。AGAは進行性の脱毛症であるため、AGAを発症した場合は何らかの治療を施さない限り薄毛が進行してしまいます。
AGAによる薄毛や抜け毛は、主に男性ホルモンの一種「テストステロン」と体内の還元酵素「5αリダクターゼ」が結合して生成される「DHT(ジヒドロテストステロン)」によって発症します。DHTが額の生え際や頭頂部に存在する男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合すると脱毛因子が増加し、髪の毛が成長する周期「ヘアサイクル」が短縮されることで薄毛や抜け毛が助長されるのがメカニズムです。
AGAの治療法は多岐に渡りますが、現在、世界で推奨されている治療法は投薬治療です。投薬治療では薄毛の進行を抑える治療薬や発毛を促す治療薬の使用によって薄毛や抜け毛を改善します。
- ◆フィナステリド内服薬
- フィナステリドはAGAの主な原因とされるDHTを生成する「5αリダクターゼ」の働きを阻害する作用があります。5αリダクターゼの働きを阻害することでDHTの生成を防ぎ、薄毛や抜け毛の発症を抑える効果を発揮します。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型がありますが、フィナステリドはⅡ型5αリダクターゼのみを阻害する特徴があります。
- ◆デュタステリド内服薬
- デュタステリドはフィナステリドと類似の作用を持ちますが、デュタステリドはⅠ型5αリダクターゼとⅡ型5αリダクターゼの双方を阻害する特徴があります。また、Ⅱ型5αリダクターゼを阻害する効果はフィナステリドの約3倍、発毛効果はフィナステリドの約1.6倍あるといわれています。
- ◆ミノキシジル外用薬
- ミノキシジルは主に髪の毛の成長に関わる毛乳頭細胞に働きかけ、AGAの発症によって短縮されたヘアサイクル成長期を延長させる働きを持っています。毛乳頭細胞から産生される毛母細胞を刺激する物質の生成を促したり、毛乳頭細胞そのものを増殖させる働きがあるためです。
【国内で推奨されているAGA治療薬の種類】
抜け毛予防はAGAヘアクリニックで
栄養バランスを整えるためにナッツ類の摂取を習慣化させることは健康的な体づくりに繋がるといえるでしょう。また健康的な体を維持することで頭皮環境や育毛環境が整い、不摂生による薄毛や抜け毛が予防できます。
しかし薄毛や抜け毛の原因がAGAだった場合には、ナッツ類の摂取や健康体の維持だけでは改善できません。また個人の判断で薄毛や抜け毛の原因を特定することは難しいため、薄毛や抜け毛が気になる場合は一度医師の診察を受けることをお勧めします。
AGAヘアクリニックはAGA治療専門の病院です。当院では薄毛や抜け毛の原因を的確に診断し、一人ひとりに合った治療薬を処方しています。医師による診察は何度でも無料で受けることが出来ますので薄毛や抜け毛にお悩みの場合は、ぜひ一度当院へ診察にお越しください。
出典・参考URL
- ナッツ - 日本微量栄養素情報センター
- 日本食品標準成分表:種実類 - 文部科学省
- アーモンド - わかさ生活
- アーモンド - 日本ナッツ協会
- スーパーフード推奨品目 - 日本スーパーフード協会
- ピーナッツ - わかさ生活
- 日本の落花生生産 - 全国落花生協会
- ピスタチオ - わかさ生活
- 野菜・果物の健康有用性 ―ファイトケミカルの多様な機能とその仕組み― - 東海学院大学
- ピスタチオナッツ - 日本ナッツ協会
- くるみ - わかさ生活
- クルミ - 日本ナッツ協会
- エビデンスに基づく栄養学:くるみと健康に関する研究 - カリフォルニアくるみ協会
- カシューナッツ - わかさ生活
- カシューナッツ - 日本ナッツ協会
- マカダミアナッツ - わかさ生活
- マカダミアナッツ - 日本ナッツ協会
- 不飽和脂肪酸 - わかさ生活より
- N-3 polyunsaturated fatty acids in coronary heart disease: a meta-analysis of randomized controlled trials. - National Library of Medicine
- Effects of a high-dose concentrate of n-3 fatty acids or corn oil introduced early after an acute myocardial infarction on serum triacylglycerol and HDL cholesterol. - National Library of Medicine
- Omega-3 fatty acids in major depressive disorder. A preliminary double-blind, placebo-controlled trial. - National Library of Medicine
- Alterations of mast cell mediator production and release by gamma-linolenic and docosahexaenoic acid. - National Library of Medicine
- Dietary supplementation of gamma-linolenic acid improves skin parameters in subjects with dry skin and mild atopic dermatitis. - National Library of Medicine
- 脂質 - 厚生労働省
- 飽和・不飽和脂肪酸と肥満・動脈硬化性疾患 - 京都医療センター
- オレイン酸 - わかさ生活より
- Effect of diets high in butter, corn oil, or high-oleic acid sunflower oil on serum lipids and apolipoproteins in men. - National Library of Medicine
- 高度不飽和脂肪酸とオレイン酸の健康栄養機能 - 日清オイリオグループ株式会社中央研究所
- ビタミンEの抗酸化作用 - 東京大学工学部反応化学科