【医師が教える】貧血で薄毛になる?知っておきたい原因と対策方法
薄毛や抜け毛を招くと言われる原因の一つに「貧血」が影響していることはご存知でしょうか。貧血には様々なタイプが存在しますが、今回は薄毛に繋がりやすい「鉄欠乏性貧血」についてご説明いたします。鉄分については、不足しやすい栄養素であると同時に、欠かせない栄養素の一つです。そんな鉄分が不足することで起こる貧血と薄毛にはどのような関係があるのでしょうか。今回のAGAタイムスでは、貧血により薄毛になる原因と対策方法までご紹介します。
鉄分不足は薄毛や抜け毛を招くのか?
結論から言うと、鉄分不足自体が薄毛を招くのではなく、鉄欠乏性貧血に伴う栄養障害により薄毛や抜け毛が生じると考えられています。
鉄は私たちの身体をつくる必須ミネラルの一つであり、貧血の予防に欠かせない栄養素です。鉄は赤血球の成分であるヘモグロビンに多く含まれており、全身の組織に酸素を運ぶ重要な役割を果たしています。他にも筋肉や肝臓などに貯蔵鉄として存在し、血中の鉄が不足すると貯蔵鉄から不足分が補われます。
体内の鉄が不足し酸素の供給が滞ると、細胞の働きに必要なエネルギー源が不足します。髪の毛の生成も細胞の働きが基となっているため、結果的に鉄分不足が育毛を阻害し、薄毛や抜け毛を招く可能性があるのです。
鉄分不足でみられる症状
薄毛の原因が鉄分不足であるかどうかを自分自身で判断するのは難しいといえますが、鉄分不足で身体に現れやすい症状を知っておくと一つの判断材料になるでしょう。
鉄分不足でみられる症状は以下のようなものがあります。
- 息切れ・動悸・倦怠感
- 血色不良・顔面蒼白
- 起立性低血圧・立ちくらみ
- 異食症
- 爪のひび割れ、匙状爪 など
息切れや動悸、倦怠感は貧血に特異的ではないものの、よく見られる症状です。やや長い距離の歩行や階段を登るときなどに自覚されます。
異食症とは、食べ物ではないものを口にしてしまう症状です。異食内容は、氷を食べる氷食症が最も多く、その他にも土や粘土を食べる土食症、髪の毛を食べる毛食症などがあります。異食症と鉄分不足は関連性が示唆されているもののメカニズムは不明な点が多く、明確な理由が解明されていないのが現状です。
匙状爪は別名スプーンネイルとも呼ばれ、爪の中央がへこみ、爪の先が反り返ってスプーン状になる症状です。鉄欠乏性貧血に特異的に見られる症状であるため、鉄欠乏性貧血であるかどうかを視覚的に確認できる一つのバロメーターでもあります。
その他にも朝起きにくいと感じたり、頭が痛かったりなどの症状が鉄欠乏性貧血に見られる特徴です。それらの症状が見られるからといって必ずしも薄毛と関係しているわけではありません。しかし、上記に紹介したような症状が自覚されたときは薄毛の原因として鉄分不足が潜んでいる可能性があります。
鉄分が不足する原因
鉄分が不足する主な原因としては「生理や妊娠・授乳期」「外傷による出血」「過度なダイエット」「胃酸の分泌不足」「加工食品の過剰摂取」が挙げられます。
1,生理や妊娠、授乳期
女性の場合、生理や妊娠・授乳期などで鉄分の需要が増大し鉄不足が起こる場合があります。そのため女性は鉄分が不足しやすく、男性より女性の方が貧血の症状を発症しやすいといわれています。
2,外傷や病気による出血
ケガや病気により大量に出血した場合、血液自体の量が減るため貧血となる可能性があります。貧血を招く恐れのある内臓疾患として、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がんなどが挙げられます。
3,過度なダイエット
近年ではエネルギー制限によるダイエット志向が高まり、過度なダイエットをする方が多く見られるようになりました。特に女性においては小学校高学年からダイエット意識を持つ方が増え、女子高生においては過半数以上の方がダイエット経験を持ちます。
過度な食事制限を続けると栄養が偏り、貧血を起こす可能性が高まるといわれています。場合によっては貧血だけでなく無月経を招く恐れもあります。
4,胃酸の分泌不足
胃切除手術などを行なった後、胃の消化機能が低下し胃酸が減少します。その結果、鉄の吸収率も悪くなり貧血の症状が現れたという報告もあります。
5,加工食品の過剰摂取
食品添加物として使用されるリン酸塩は、鉄分の吸収を阻害するとされています。多量に摂取することがなければさほど気にする必要はありません。しかし、鉄分の特性を考慮するとハムやソーセージなどの加工食品やインスタント食品などの過剰な摂取は控えた方がよいといえるでしょう。
鉄分不足解消で薄毛対策
薄毛や抜け毛を防ぐためにも、鉄分不足を解消・予防することが大切です。鉄分不足は、普段の食生活で改善することができます。
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類が存在します。ヘム鉄は主に肉や魚などの動物性食品に含まれ、非ヘム鉄は卵や乳製品、植物性食品に含まれています。ヘム鉄の方が非ヘム鉄に比べ、体内での吸収率が高いとされる特徴があります。
鉄分不足を解消するには一日3食、栄養バランスの整った食事を摂取することが大切です。しかしながら鉄は吸収率が低いため(※)、鉄を多く含む食品から積極的に摂取する必要があります。
※鉄の吸収率は個人の赤血球生産能、貯蔵鉄量、食事の鉄量と質などによって左右されます。
非ヘム鉄 | ヘム鉄 | ||
---|---|---|---|
食品 | 1食あたりの含有量 | 食品 | 1食あたりの含有量 |
ほしひじき 15g | 8.3mg | アサリ缶詰 65g | 19.3mg |
小松菜 80g | 2.2mg | 豚レバー 80g | 10.4mg |
糸引き納豆 50g | 1.6mg | 牛肉ヒレ 120g | 2.9mg |
大豆(乾燥) 30g | 2.8mg | マイワシ(丸干し)50g | 2.2mg |
推奨量(日本人の食事摂取基準2015年版より)…成人男性:2.0〜7.5g 成人女性(月経あり):10.5g
ヘム鉄は牛・豚・鶏などの肉類やレバー、赤身の魚に多く含まれており、非ヘム鉄は海藻類やほうれん草、ニラなどの野菜、豆類などに多く含まれています。
栄養素は吸収率を高めてくれる食品を一緒に摂取することが大切です。鉄の吸収率を上げるためには、ビタミンCとの併用がおすすめです。一方で、シュウ酸やカルシウムと併用すれば吸収率は下がります。
薄毛や抜け毛が気になったら医師へ相談を
鉄分不足によって体内のヘモグロビンが減少し酸素の供給量が減ると、育毛に良くない影響を及ぼす恐れがあることが考えらています。それ以外にも貧血は多くの不調を引き起こすため、早めに改善を試みるべきでしょう。
立ちくらみがしたり、動悸が激しくなったりなどの自覚症状を感じた場合には医師に相談しましょう。自己判断で貧血の改善を先送りにしてしまうと、体調不良や血中の酸素不足によって、思わぬ薄毛や抜け毛の悩みを増やしかねません。食生活を見直したりサプリメントを服用したりするなど、対策は様々ありますが、貧血の症状が改善されない場合には医療機関で医師の診断を受けることをおすすめします。