【医師が教える】お米は食べるべき? 炭水化物抜きダイエットが髪の毛に与える影響とは
健康や美容に対する意識が高まっている近年「炭水化物抜きダイエット」が一種のダイエット法として広く知られるようになりました。しかし、三大栄養素の一つである炭水化物を抜くことで育毛を妨げる可能性も考えられます。一方で、炭水化物の一種として親しまれている「お米」にはあらゆる栄養素が含まれているため、育毛に良い影響を与える可能性も。そこで今回のAGAタイムスは炭水化物抜きダイエットやお米の摂取が髪の毛に与える影響について考えていきます。
炭水化物抜きダイエットとは
炭水化物抜きダイエットは、日頃の食生活から炭水化物を抜いて減量を目指すダイエット方法の一種です。「ケトジェニック・ダイエット」や「アトキンス・ダイエット」などとも呼ばれています。もともと糖尿病や肥満の治療を目的として行われている「糖質制限」などの食事療法をはじめとし、様々な研究とともに新たなダイエット法として定着したものと考えられます。
炭水化物は「糖質+食物繊維」で成り立っています。通常、ヒトは主に炭水化物などの「糖質」をエネルギー源として生命活動を維持していますが、炭水化物の摂取を制限し糖質を抑えることで糖質の代わりに体内の「脂質」を利用したエネルギー生成回路へと変わります。「脂質」から「ケトン体」を生成することでエネルギーを産生します。
また、炭水化物に含まれる糖質を摂取すると血糖値が上昇します。血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌され、血糖を一定に保とうと働きます。しかし、このインスリンが食欲を増進するといわれており、さらなる炭水化物などの過食によって処理しきれなかった糖質は脂肪細胞や内臓脂肪として蓄積されると考えられています。
これらのことから炭水化物抜きダイエットは、炭水化物に含まれる糖質の摂取を制限することで脂肪をエネルギーとして消費できたり、余分な糖質を脂肪として蓄えたりすることがなくなるため、減量に繋がるといわれています。
炭水化物が髪の毛に与える影響
炭水化物ダイエットや糖質制限の食事療法が存在するように「炭水化物はなるべく避けるべき」と考えられがちですが、炭水化物にもきちんと体に働きかける役割があります。また近年の研究では“炭水化物は避けるべきだ、とは一概にはいい難い”という意見も散見されます。そのため、栄養学や医学的根拠に基づいた炭水化物ダイエットの是非は未だ決着していないといえるでしょう。炭水化物が体や髪の毛に与える影響も様々で、良い面もあれば良くない面もあることが考えられます。
- ◆炭水化物が髪の毛に与えるメリット
- 炭水化物の最も重要な役割はエネルギー源としての機能です。栄養学的には、主に脳や神経組織、赤血球、酸素不足の骨格筋などにブドウ糖を供給する役割を持っています。このように炭水化物は体のあらゆる機能に関与しているため、きちんと摂取することで体がエネルギー不足を起こしにくくなり正常な働きを保ちやすくなるといわれています。
- また炭水化物には様々な種類があり、糖質や脂質以外の栄養素を含むものも存在します。そのため、日頃の食生活で必要な栄養素を十分に補うためにも炭水化物の摂取が役立っていることが考えられます。
- 丈夫で健康な髪の毛を育むためには土台となる体の健康状態を最善に保つことが重要だとされています。炭水化物を含む栄養素をバランス良く摂取することで健康体の維持に繋がり、正常な育毛が促されることが考えられます。
- ◆炭水化物が髪の毛に与えるデメリット
- 炭水化物などの糖質を過剰に摂取し高血糖状態が続くと、糖化反応が起こるとされています。糖化は炭水化物から変化したブドウ糖がタンパク質に反応することで糖化最終生成物(AGEs)に至る現象です。このAGEsが体内に蓄積されると様々な慢性疾患や肌の老化など全身の健康に影響を及ぼすといわれています。そのため炭水化物の過剰摂取は体の健康状態に悪影響を及ぼし、髪の毛の正常な発育にも影響が及ぶ可能性があると考えられます。
低炭水化物ダイエットにおいては様々な研究結果があり、“顕著な体重減量と血糖値の低下が見られたが、同時に血清尿素窒素の上昇や腎機能の低下が見られた”とする報告も存在します。また、“過剰な糖質制限をすると死亡率が上がる”という報告もあれば、“炭水化物を取りすぎると死亡リスクが高まる”といった報告もあります。
このように炭水化物の摂取に関しては未だ解明されていない部分が多く、推奨摂取量も定かではないといえます。しかし、これらの見解から炭水化物は極端な制限や過度な摂取をするのではなく、適量を摂取していくと良いことが考えられます。
糖質制限食が直接抜け毛や薄毛になることは考えにくいですが、栄養が不足することで正常な育毛が妨げられたり、髪の毛のハリやコシが失われやすくなるなどのトラブルが起こることがあります。健康的な体を維持することを目的に適量な炭水化物を摂取していくことは必要であるといえるでしょう。
炭水化物の種類
炭水化物は三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)の一種として、ミネラルやビタミンよりも古くから認識されている栄養素です。
炭水化物はヒトの消化酵素で消化可能な「易消化性炭水化物」と、消化不能な「難消化性炭水化物」に分けられます。一般的には易消化性炭水化物を「糖質」、難消化性炭水化物を「食物繊維」と呼び、栄養学などに用いられています。
栄養学的にみると、炭水化物の中でも特に糖質がエネルギー源としての重要な役割を担っているとされています。一方で食物繊維は腸内細菌による発酵分解によってエネルギーを産生しますが、もともと炭水化物に含まれる食物繊維の量はごくわずかです。そのため、炭水化物のエネルギー源としての機能は主に糖質の働きであると考えられています。
一般的によく食べられている炭水化物には様々な種類があり、種類によって含まれる栄養素も異なります。日本では古くから親しまれている炭水化物に「お米」や「玄米」がありますが、お米や玄米はあらゆる栄養素を含んでいるため、適量の摂取は健康体の維持に繋がることが考えられます。
- ◆炭水化物を多く含む食材
- ・米類(白米、玄米など)
- ・麺類(パスタ、うどん、蕎麦など)
- ・パン類(食パン、菓子パンなど)
- ・いも類(じゃがいも、さつまいもなど)
- ・砂糖類(白砂糖、三温糖、黒砂糖など)
- ・甘味類(はちみつ、メープルシロップなど) など
白米に含まれる栄養素
日本人にとって最も身近な炭水化物といっても過言ではない白米には、炭水化物以外にもタンパク質や脂質、ビタミン・ミネラル類など様々な栄養素がバランスよく含まれています。炭水化物(糖質)の過剰摂取は良くないといわれていますが、適量の摂取であれば白米も健康な体づくりや正常な育毛を助長することが考えられます。中でも特に育毛に期待が持てる栄養素は「亜鉛」「ビタミンB1」「ビタミンB2」「ビタミンE」です。
◆亜鉛
髪の毛を構成する主な成分「ケラチン」はタンパク質の一種です。このケラチンはタンパク質が再合成されて生成されますが、その再合成をサポートしてくれる栄養素が亜鉛です。亜鉛が不足するとケラチンの生成が正常に促されず、髪の毛が育たないことがあります。
このように髪の毛と深い関わりを持つ亜鉛ですが体内での吸収率は約10~30%といわれており、あまり高くはありません。またインスタント食品やファストフードなどの加工食品に含まれる食品添加物や鉄剤・昇圧剤などの薬剤によって亜鉛の吸収が妨げられることもあります。また微量ミネラルの中では最も不足しやすい栄養素であると考えられているため、白米は日常生活において亜鉛の摂取に役立つ食べ物といえるでしょう。亜鉛は白米以外にも牡蠣や豚レバー、豚肉、卵黄などに含まれています。
◆ビタミンB1
別名「チアミン」とも呼ばれているビタミンB1は糖質の代謝や神経機能、脳内伝達物質の正常化を助ける働きがあるといわれています。また炭水化物をエネルギーに変える役割も担っているため、ビタミンB1が不足すると体が疲れやすくなることも考えられます。
また、脳にとって糖質はエネルギー源です。ビタミンB1不足で糖質の代謝に影響がでると、イライラしたり精神が不安定になることがあります。ストレスを抱えた状態が慢性化すると、自律神経が乱れて血行不良を助長する可能性があります。
このようにビタミンB1は正常な育毛に重要とされる“健康体の維持”に欠かせない栄養素であるため、白米でビタミンB1を日常的に摂取することは丈夫な髪の毛を育むことにも繋がると考えられます。白米以外では、豚肉やイモ類、豆類、玄米、ゴマなどにビタミンB1が含まれています。
◆ビタミンB2
ビタミンB2は糖質やタンパク質、脂質の代謝を促す働きがあると考えられています。中でも特に脂質の代謝に大きく関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ働きがあるとされています。そのためビタミンB2が不足すると脂質の代謝が促されず、皮膚が脂性になったり、かゆみを伴ったりする可能性があります。皮膚の一部である頭皮の健康状態にもビタミンB2が関わっていることが考えられるため、頭皮の健康状態を良好に保つためにもビタミンB2の摂取は必要であるといえるでしょう。
白米以外でビタミンB2を含む食品はレバー、納豆、ほうれん草、魚介類、卵などです。頭皮に何らかのトラブルが起こると正常な育毛が妨げられることがあるため、白米やその他の食品でビタミンB2を摂取することは頭皮や髪の毛の健康維持に繋がるといえます。
◆ビタミンE
ビタミンEには血管を拡張させて血流を良くする働きがあるといわれています。血流が促されると様々な生活習慣病などが起こりにくくなると考えられているため、正常な育毛状態にする可能性があります。また脂肪の酸化を防ぐ働きもあるので、抜け毛を招く原因のひとつといわれる過酸化脂質の発生を抑制する効果も期待できるとされています。
ビタミンEを摂取するときはビタミンAやビタミンCと一緒に摂ると、より高い効果が得られるといわれています。白米以外でビタミンEを含む食材にはアーモンドやうなぎ、かぼちゃ、卵などがあります。
玄米に含まれる栄養素
玄米とは収穫したお米からもみ殻だけを取り除き、ぬか層が付いた状態のお米です。ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、老化防止や細胞の活性化などの効果が期待できるといわれています。玄米に含まれる栄養素のなかでも健康維持や育毛に良いと考えられるものは「GABA」「γ-オリザノール」「イノシトール」「ポリアミン」です。玄米に含まれる栄養素が持つ健康増進効果により、正常な育毛を促す効果が期待できるでしょう。
◆GABA(γ- アミノ酪酸)
神経伝達物質であるGABAは脳への酸素供給量を増加させ、抗痙攣作用や抗不安作用、脳の代謝機能亢進などが認められています。また中性脂肪やコレステロール値を下げる効果を持ち、生活習慣病の予防に効果が期待できます。
◆γ-オリザノール
米ぬかに含まれる植物ステロールのγ-オリザノールには、食事由来のコレステロールの吸収を抑える作用があるといわれています。また脚気の予防や更年期障害、自律神経失調症などを軽減させる抗ストレス作用、抗ステロール作用、皮膚の老化防止などの抗酸化作用を持つことがわかっています。
◆イノシトール
ビタミン様物質として扱われているイノシトールには抗脂肪肝作用や動脈硬化予防カルシウムの吸収促進などがあるといわれています。また、それらの作用により生活習慣病を予防する効果が期待できると考えられています。
◆ポリアミン
ポリアミンはヒトだけでなくウイルスなど様々な細胞に存在する成分です。新陳代謝を活発にする働きが期待でき、皮膚の老化防止にも繋がると考えられています。またポリアミンは体内の細胞分裂において重要な役割を担っているため、生命の維持に必要不可欠な成分であるとされています。
ポリアミンは加齢に伴い体内で合成される量が減少するといわれていますが、食べ物から補うことで体内の組織に届き、その効果が発揮されると考えられています。
炭水化物だけで育毛を左右するのは難しい
炭水化物の最適な摂取量には未だ様々な意見があり、健康や育毛に最適な摂取方法も明らかになっていません。そのため炭水化物の適度な摂取だけでは育毛の著しい活性化は見込めないといえるでしょう。
髪の毛の成長には栄養素の他にも様々な機能が関わっています。特に薄毛や抜け毛が気になる場合には、栄養素だけでなく「男性ホルモン」が大きく関係していることも考えられます。
成人男性に多く見られる薄毛や抜け毛は男性ホルモンに起因する「AGA(男性型脱毛症)」であることが多いといわれています。AGAは進行性の脱毛症です。主に男性ホルモンの一種「テストステロン」が体内の還元酵素「5αリダクターゼ」と結合して生成される「DHT(ジヒドロテストステロン)」によって発症します。
AGAは進行性であるため、一度発症すると何らかの対処を行わない限りは薄毛や抜け毛が進んでいきます。しかしAGAは治療で改善が可能であるため、薄毛治療専門のクリニックなどでの治療が有用とされています。
またAGAの主な原因は男性ホルモンであるとされていますが、食生活の乱れなどの不摂生や遺伝も関わっていると考えられているため、炭水化物を含む三大栄養素やビタミン類、ミネラル類をバランスよく摂取していくことと併せて薄毛治療を進めていくと、より改善の効果が期待できるでしょう。
薄毛治療はAGAヘアクリニックへ
AGAヘアクリニックは薄毛治療専門の病院です。AGAによる薄毛の治療、薄毛や抜け毛の原因の診察など、様々なお悩みに対応しております。医師による診察は何度でも無料で受けることができるため「まずは薄毛や抜け毛の原因が知りたい」という場合でもお気軽にお越しいただけます。AGAの場合は症状が自然に進行していきますので、薄毛や抜け毛が少しでも気になる場合はぜひ一度当院へ診察にお越しください。
出典・参考URL
- ケトジェニックダイエットがヒトの健康に及ぼす影響について — 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科
- 低炭水化物ダイエットの減量効果に関する文献的検討―肥満者を対象として — 大阪樟蔭女子大学
- 「糖質制限」は体を壊す?医学的見地から見た効果と副作用 — 虎の門中村康宏クリニック
- 糖質制限食について — 永田内科
- 糖化ストレスと抗糖化作用の評価 — 同志社大学
- AGEって知ってますか? — 杏林大学医学部付属病院栄養部
- 糖質制限食による死亡リスク — 国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究部
- 糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文 — 高雄病院理事長 江部 康二
- 糖質制限食について — 青山病院 植田秀樹
- 三大栄養素 — 麻布大学獣医学部
- 炭水化物 — 厚生労働省
- 三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量 — 公益財団法人長寿科学振興財団
- 亜鉛 — わかさ生活
- ビタミンB1 — わかさ生活
- Brain thiamine, its phosphate esters, and its metabolizing enzymes in Alzheimer’s disease. — Ann Neurol
- Reappearance of beriberi heart disease in Japan. A study of 23 cases. — Am J Med
- Thiamine therapy in Alzheimer’s disease. — Metab Brain Dis
- ビタミンB2 — わかさ生活
- ビタミンE — わかさ生活
- Effect of low dose antioxidant vitamin and trace element supplementation on the urinary concentrations of thromboxane and prostacyclin metabolites. — J Am Coll Nutr
- Trial of d-alpha-tocopherol in Huntington’s disease. — Am J Psychiatry
- The role of vitamin E in the prevention of coronary events and stroke. Meta-analysis of randomized controlled trials. —
- Antioxidant vitamins intake and the risk of coronary heart disease: meta-analysis of cohort studies. — Eur J Cardiovasc Prev Rehabil
- 白米、玄米および発芽玄米がコレステロール排泄に及ぼす影響 — 徳島大学大学院栄養生命科学教育部ほか
- 玄米 — わかさ生活
- Insoluble fiber is a major constituent responsible for lowering the post-prandial blood glucose concentration in the pre-germinated brown rice. — Biol Pharm Bull
- Effects of white rice, brown rice and germinated brown rice on antioxidant status of type 2 diabetic rats. — Int J Mol Sci
- White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women. — Arch Intern Med
- 発芽玄米の食品学的機能 — 北海道文教大学
- イノシトール — わかさ生活
- Type 3 inositol 1,4,5-trisphosphate receptor modulates cell death. — FASEB J
- Ovulatory and metabolic effects of D-chiro-inositol in the polycystic ovary syndrome. — N Engl J Med
- ポリアミン — わかさ生活
- [Physiological functions of polyamines and regulation of polyamine content in cells]. — 薬学雑誌
- Spermidine promotes human hair growth and is a novel modulator of human epithelial stem cell functions. — PLoS One
- 鉄・亜鉛の単独および同時欠乏が血漿中各種ミネラル濃度に与える影響 — 聖徳大学大学院