【医師が教える】髪の毛の成長にはビタミンが必須? 育毛や薄毛との関係性とは
健康的で美しい髪の毛を維持するためには、髪の毛を育むために必要な栄養素を積極的に摂取することが重要です。しかし、多忙な生活を送るうちについつい食事をおろそかにしてしまうこともあるでしょう。
髪の毛も他の細胞と同じく、栄養素や酸素を取り込むことによって成長するため、栄養が不足した状態では育毛に悪影響を及ぼす恐れがあります。育毛に関連する栄養素は多くありますが、今回のAGAタイムスではその中でも欠かせない栄養素「ビタミン」について詳しく解説していきます。
育毛に効果的な栄養素
健康的な髪の毛を作るために大切な栄養素は色々ありますが、その中でも特に必要とされる栄養素はタンパク質、亜鉛、ビタミンの3つといわれています。
【タンパク質の作用】
髪の毛は約80~85%がタンパク質でできており、そのほとんどが「ケラチン」と呼ばれるタンパク質です。このケラチンは「シスチン」を中心とした18種類のアミノ酸から構成されています。シスチンは必須アミノ酸「メチオニン」からも合成されますが、体内では合成ができないため普段の食事から摂取する必要があります。
そのため、これらの成分の原料となるタンパク質の摂取が不足すると髪の毛が弱って細くなったり、薄毛や抜け毛に進展する可能性も。したがって、肉や魚などの動物性タンパク質、大豆や小麦粉(全粒粉)などの植物性タンパク質をバランスよく摂取する必要があると考えられます。
【亜鉛の作用】
体内に摂取したタンパク質から髪の毛を生成するために役立つのが「亜鉛」です。亜鉛は数種類のアミノ酸が結合されてできるケラチン(タンパク質の一種)のアミノ酸結合を促進しているため、タンパク質を豊富に摂取していても亜鉛が不足していると健やかな髪の毛の成長を妨げる可能性があります。
マウスの培養細胞を用いた実験では、亜鉛の輸送体(※)であるZIP10が欠損することで表皮や毛包の形成が阻害されるという報告があります。これにより皮膚のバリア機能が失われたり、髪の毛の形成に支障をきたしてしまうため、亜鉛は健やかな髪の毛や頭皮環境を育むために欠かせない栄養素といえるでしょう。
※輸送体(トランスポーター)とは、細胞内外の物質輸送に関わるタンパク質の総称。
【ビタミンの作用】
先に紹介したタンパク質や亜鉛はもちろん重要な役割を果たしますが、その栄養素の吸収率を高めてくれるのが「ビタミン」です。タンパク質や亜鉛などの栄養素をいくら食事から摂取しても、吸収されず体外に排出されてしまっては意味がありません。
また、ビタミンは髪の毛のもと(角化細胞)の供給源である「毛包幹細胞」が幹細胞性を維持したり、毛包幹細胞が色素幹細胞のニッチ細胞として機能するために必要なコラーゲンの生成もサポートします。
ほかにも、活性酸素の除去のサポートや頭皮の新陳代謝・血行を促進し、髪の毛が育ちやすい環境を整える役割などがあります。しかしビタミンはほとんど体内で生成できないため、意識的に摂取することが大切です。
髪の毛の生成を助けるビタミン類
ビタミン類の中でも、特に髪の毛に良い影響を与えるものを紹介します。適した量を継続的に摂取することで、頭皮環境の乱れを予防・改善する効果が期待できます。
〇ビタミンA
ビタミンAは上皮細胞の正常化に関係する栄養素なので、不足すると皮膚や粘膜上皮の角質化を招く可能性があります。正しく摂取すれば頭皮など肌の健康を維持するのに役立つ一方、過剰に摂取すると身体に悪影響を与える恐れがあるため摂取量には注意が必要です。
〇ビタミンB群
ビタミンB群は肌の新陳代謝を良くして頭皮を健やかに保ち、豊かな髪の毛の維持に役立つといわれています。ビタミンB群は種類が多く、糖質・脂質・タンパク質(三大栄養素)の代謝や赤血球の生成促進による血流改善などの働きもあります。
〇ビタミンC
ビタミンCには健康的な髪の毛を育むために必要なコラーゲンの生成や鉄分の吸収をサポートする効果があります。また抗酸化作用により老化を引き起こす活性酸素から身体を守るため、頭皮を健やかに保つ働きも期待できます。
〇ビタミンE
ビタミンEはビタミンCと同様に抗酸化作用があり、活性酸素などから細胞の老化を防ぎます。またホルモンバランスや自律神経などの生体機能を調節する効果や血行促進効果もあるため、育毛に適した健やかな体を維持できると考えられています。
〇ビタミンK
毛髪の損傷形態と栄養状態の関連の研究では、ビタミンKの摂取量が低いと他のビタミン吸収量が落ちてキューティクルの損傷を招きやすくなる可能性が示唆されています。指通りが良く、しなやかでコシのある髪の毛を維持するためには必要な栄養素といえるでしょう。
ビタミンを摂取する際の注意点
ここまでの説明でも分かるように、ビタミンは髪の毛にとって大切な栄養素です。できることなら意識して食事から摂取することが理想的ですが、むずかしい場合にはサプリメントを活用するのもひとつの手です。しかし、ビタミンサプリの利用にはいくつかの注意点もあります。
【ビタミンA、ビタミンEの過剰摂取は厳禁】
ビタミンの過剰摂取によって起こる症状のことを「ビタミン過剰症」と呼びます。特にビタミンAの過剰摂取は頭蓋内圧の上昇(偽脳腫瘍)、浮動性めまい、悪心、頭痛、皮膚炎、関節や骨の痛み、昏睡がみられ、ときには死に至るケースもあるので注意が必要です。
またビタミンEは体内に蓄積しにくい栄養素であるため、通常の食事では過剰症がみられることはないといわれています。しかし、サプリメントなどで極端に過剰摂取した場合には健康障害が生じる可能性も否定できません。過剰摂取により出血が起こりやすくなるという臨床結果の報告もあります。
それぞれの摂取推奨量や目安量は以下を参考にしてください。
ビタミンAの推奨摂取量 | |
---|---|
成人男性 | 成人女性 |
約800~900μg RAE | 約650~700μg RAE |
※RAE=ビタミンAの食事摂取基準の数値を表す単位。
ビタミンEの摂取目安量 | |
---|---|
成人男性 | 成人女性 |
約6.5mg | 約6.0mg |
ビタミンで健やかな体を整え育毛に適した環境づくりを
ビタミンは適切な量に気を配りながら正しく摂取することで、薄毛予防に必要不可欠な健康体へと促せる可能性があります。まずは栄養素から体の健康を見直して、すこやかな髪の毛を育む環境を少しずつ整えましょう。
ただし、すでに薄毛が進行している場合はAGA(男性型脱毛症)を発症している可能性があるため、早めに診察を受けることをお勧めします。まずはAGA治療専門の病院やクリニックに相談してみるとよいでしょう。
薄毛治療を専門とするAGAヘアクリニックでは、薄毛に関する診察や相談を無料で行なっております。遠方から通うことが困難な方のために、テレビ電話を使用したオンライン診療も可能です。脱毛の原因を見極め、的確な治療方法を提案することで一刻も早いお悩みの解消をお手伝いいたします。抜け毛や薄毛が気になる方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
出典・参考URL
- 髪の基礎知識 vol.13「髪の成分」 - デミコスメティクス
- 毛包と表皮の形成における亜鉛の役割を解明 - 徳島文理大学、昭和大学、理化学研究所
- 生体機能における亜鉛トランスポーターの重要性~亜鉛トランスポーターをめぐる最近の知見~ - 京都大学大学院生命科学研究科
- 毛包幹細胞が色素幹細胞を維持する仕組みを解明 - 難治疾患研究所
- ビタミン - eヘルスネット
- 抗酸化ビタミン - eヘルスネット
- 走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連 - 金城学院大学大学院人間生活学研究科
- ビタミンA - eJIM 厚生労働省
- ビタミンE - eJIM 厚生労働省
- ビタミンAの働きと1日の摂取量 - 公益財団法人長寿科学振興財団
- ビタミンEの働きと1日の摂取量 - 公益財団法人長寿科学振興財団
- それぞれのビタミンの特徴と働きは? - 公益財団法人日本食肉消費総合センター
- 髪の毛によい食べ物は? - 森永乳業
- ビタミンE - 一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所
- ビタミンK - 栄養素カレッジ 大塚製薬