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【医師が教える】前立腺肥大治療薬「アボルブ」はAGA治療に使える? 薬の役割やリスクを解説

薄毛治療

インターネットで「AGA(男性型脱毛症)治療薬」を検索すると、「プロペシア(フィナステリド配合)」や「ザガーロ(デュタステリド配合)」などとともに「アボルブ」という薬品名が出てきます。これもAGA治療薬なの?と首をひねる人も少なくないでしょう。

そこで今回のAGAタイムスでは、アボルブとはどんな薬なのかをくわしく解説していきます。

アボルブは前立腺肥大症の内服治療薬

アボルブはイギリスの大手製薬会社グラクソ・スミスクライン社が製造販売する「前立腺肥大症」の治療薬で、日本では2009年7月に厚生労働省に承認され、販売が始まりました。

男性の膀胱の出口にある「前立腺」は加齢に伴って肥大化する傾向にあり、60代で約60%、70代で約70%が、程度の差こそあれ肥大するといわれています。その結果、内部を通る尿道が圧迫されて様々な排尿障害(頻尿、排尿遅延、残尿感、尿勢の低下など)を引き起こすことになります。これが「前立腺肥大症」という病気です。

前立腺肥大症の原因は明確には解明されていないものの、加齢による男性ホルモン分泌の変化に起因するものと考えられています。症状が進むと排尿障害が悪化するだけでなく様々な合併症を引き起こすこともあり、症状が強い場合や合併症が見られる場合には手術治療を要しますが、最初の選択肢としては薬物(内服)治療が行われ、以下のような薬剤が処方されます。

●α1受容体遮断薬
最もよく使われている前立腺肥大症の薬で、交感神経に関与する「α1受容体」を阻害することによって前立腺の筋肉を緩めて、尿道を広げることが期待されています。
●5α還元酵素阻害薬
1型および2型の5α還元酵素を阻害し、テストステロンのDHT(ジヒドロテストステロン)への変換を抑制することにより肥大した前立腺を縮小させ、排尿困難の症状の改善をする薬です。「アボルブ」はこちらに該当します。
●PDE5阻害薬
前立腺や膀胱の出口の筋肉を緩め、尿の通りを改善させることが期待される薬です。
●植物製剤
前立腺において炎症性細胞の浸潤を抑制して炎症を抑える効果、また前立腺の重量増加を抑制する効果などが認められており、前立腺肥大の症状を和らげることが期待される薬です。

アボルブの主成分はAGA治療薬と同じデュタステリド

AGA治療薬を検索した時にアボルブの名が出てくるのはなぜかというと、それはアボルブがAGA治療薬の「ザガーロ」と同様に「デュタステリド」を主成分とする薬剤であるためです。ザガーロはやはりグラクソ・スミスクライン社が製造販売しており、日本では2015年9月に承認され、翌年6月に販売が開始されました。両者ともデュタステリドの含有量は同じ(ザガーロ0.5mgの場合)で、異なる点といえばそれ以外の添加物にわずかな違いがあるだけです。

なぜ主成分が同じであるかといえば、それはAGAも前立腺肥大症も“5α還元酵素によってテストステロンがDHTに変換されることが症状の発現に関与する”という点で共通しているため。したがって「5α還元酵素をデュタステリドによって阻害する」という治療のメカニズムも共通しています。

AGAと前立腺肥大症の接点が発見されたのは、アボルブの誕生以前のことでした。1992年に米国で承認されたメルク社の前立腺肥大症治療薬「プロスカー」(主成分は「フィナステリド」)が、投薬中の前立腺肥大症患者の中のAGA罹患者に対して毛量改善という副作用をもたらしたことがきっかけでした。そこでメルク社は薄毛治療薬の研究も始め、フィナステリドを主成分とするAGA治療薬「プロペシア」を1997年に誕生させたのです。

プロスカーの作用である“5α還元酵素を阻害してテストステロンのDHTへの変換を抑制する(フィナステリドはⅡ型のみ)”という点はアボルブも同様であったため、アボルブにも薄毛改善の期待がかけられたのは自然な流れだったのかもしれません。

では、アボルブもAGA治療薬と考えてよいのかという疑問については、次項で説明していきます。

AGA治療のためにアボルブを使う場合のリスク

【基本的に適応症以外の使用は推奨できない】

アボルブとザガーロは開発販売会社、主成分、剤形、副作用は同じですが「適応症」が明確に異なります。適応症というのは、厚生労働省が医薬品を認可する際にどの疾患の治療に使ってよいかを限定した治療用途のことです。

薬品会社が申請した基礎研究および臨床試験(治験)データを厚生労働省が慎重に審査し合格となって、はじめてその疾患に対する国内の正規医薬品として使うことが可能になります。したがって、基本的には薬事承認や保険適用を目指すべきと考えられているため、それぞれの薬剤は適応症以外の疾患への使用は推奨されていません。

【主なリスク】

〇治療薬の保険適用がされない

アボルブは前立腺肥大症、ザガーロはAGAへの適用が認められた薬剤です。この違いは保険適用の有無にも関わってきます。前立腺肥大症の治療のために医師にアボルブを処方してもらう場合は保険が適用されますが、AGA治療のためにザガーロを処方してもらう場合、薄毛治療は自由診療のため保険は適用されません。

「それなら、主成分が同じアボルブを処方してもらって安く済ませたい」と考える方がいても無理はないかもしれません。しかし、アボルブが保険適用で安く入手できるのはあくまで前立腺肥大症に使用する場合のみなので、前立腺肥大症でない人がアボルブを処方してもらった場合は、結局保険適用外となってしまいます。

〇医薬品副作用被害救済制度の対象にならない可能性

またアボルブを使用して重篤な副作用があった場合、前立腺肥大症の患者でない人は「医薬品副作用被害救済制度」の対象にならない可能性が高いというリスクもあります。これは、医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用による健康被害を受けた人に対して医療費等の給付を行い、救済を図るという制度です。

どのような薬を治療に用いるかは、さまざまな症状や事情などを加味して現在の医学・薬学の科学水準に照らして総合的な見地から判断されます。そのため、医薬品の薬理学的な作用から“ある疾患に対し当該医薬品を使用することが医学・薬学上妥当である”と判断された場合には、添付文書の効能・効果、用法・用量に記載されている使用法でなくとも、社会保険診療報酬支払基金により健康保険償還対象とされるケースもあります。

しかし、AGAの治療に対してアボルブを使用することについては医薬品副作用被害救済制度の対象にならない可能性は高いといえるでしょう。どんな薬剤にも副作用の可能性がゼロではないことを考えると、そのリスクを負うことはあまりおすすめできません。

ちなみに、アボルブの添付文書には「日本国内で行われた臨床試験において、調査症例403例中44例(10.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された」と記載されています。その主なものは勃起不全13例(3.2%)、リビドー減退7例(1.7%)、乳房障害(女性化乳房・乳頭痛・乳房痛・乳房不快感)6例(1.5%)で、重大な副作用として肝機能障害(1.5%)や黄疸などが挙げられています。

個人輸入代行業者などが販売しているザガーロのジェネリック薬などを使用する場合、安全性のリスクはさらに高まります。それらの薬は主成分にデュタステリドが使われていないことも多々あります。仮に使われていたとしても、剤形や添加物などの細部が同一である可能性は低く、中にはデュタステリドの量が少なかったり、最悪の場合は健康を害するような成分が含まれている恐れも考えられます。

AGAを安く治療しようとして不確かなものに出費したり、ましてや健康リスクを背負うことは避けた方が賢明といえるでしょう。

薄毛のお悩みには適切な診察と治療を

前立腺肥大の内服治療薬アボルブは、AGA治療薬ザガーロと有効成分も治療のメカニズムも同様であるため「AGA治療に使用できるのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、先述の通りどのような治療薬でも原則適応症以外の使用は推奨されていません。

万が一、自己判断でアボルブや個人輸入で入手したジェネリック薬などを使用してしまうと様々なリスクが発生するため大変危険です。AGAによる薄毛を治療する際に大切なのは、薄毛の原因が何であるかを医師に診断してもらい、症状にあった適切な薬を処方してもらうこと。薄毛が気になる方は、まずお近くの薄毛治療専門病院などで診察を受けましょう。

薄毛治療を専門とするAGAヘアクリニックでは多くの治療実績に基づき、患者様お一人おひとりに合った治療方法や治療薬をご提供しています。内服薬や外用薬など、治療薬の組み合わせによって費用が異なるため、医師と相談したうえでご予算に合った治療方法を決められます。プライバシーに配慮した個室で診察から会計までを行なっており、カウンセリングと診察は初診・再診にかかわらず何度でも無料です。いつでもお気軽に受診していただけますので、ぜひ一度当院にご相談にいらしてください。

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