このページでは JavaScript が必要です。 設定より、JavaScript を有効にしてください。

医師が教える薄毛やAGAの治療・対策メディア

お悩みキーワード:

【医師が教える】亜鉛は薄毛に効果的? AGAと亜鉛欠乏症による抜け毛の違い

サプリ・栄養

現在、国内の患者数が1,200万人ともいわれているAGA(男性型脱毛症)。抜け毛に悩む多くの人のためにさまざまな薄毛治療の研究が行われており、テレビやインターネットなどを通じて得られる情報も増加しています。一部のメディアでは「AGAによる抜け毛には亜鉛の摂取が効果的」と紹介されていますが、本当に亜鉛を摂取することでAGAによる抜け毛が解消されるのでしょうか?今回のAGAタイムスは、医学的根拠をもとに“亜鉛欠乏症と抜け毛の関係”について解説します。

「亜鉛」とは

【亜鉛の概要】

自然界に存在している必須ミネラルの一種である亜鉛は人間の代謝に関与し、さまざまな細胞の新陳代謝に欠かせない栄養素です。

髪の毛の大部分は18種類のアミノ酸が結合した「ケラチン」と呼ばれるタンパク質から成り立っていますが、亜鉛はケラチンのアミノ酸結合を促進するといわれているため、正常な育毛を促すために必要不可欠な栄養素であると考えられています。

【補給・維持が難しい栄養素の一つ】

亜鉛は尿や汗によって少量が喪失され、大半は便とともに排泄される仕組みになっています。したがって体内に蓄えておくことができず、健康を維持するためには積極的に摂取する必要がある栄養素です。

亜鉛は主に腸で吸収され、その吸収率は30%程度といわれています。この亜鉛吸収率は、亜鉛の摂取量や同時に摂取する食べ物の栄養素によっても左右されると考えられており、カルシウムや食物繊維、ポリリン酸やフィチン酸をはじめとする食品添加物などは亜鉛の吸収を阻害する可能性があるため、注意が必要です。また、アルコールの過剰摂取も血中にある亜鉛を保持できなくなり亜鉛不足を招く恐れがあります。

反対にクエン酸やビタミンCなどの栄養素は、亜鉛の吸収を促進すると考えられています。クエン酸には亜鉛や鉄などのミネラルを包み込んで吸収を促す作用があり、ビタミンCにはクエン酸の作用をさらに向上させる効果があるといわれているため、これらの栄養素を一緒に摂取することで相乗効果が期待できるでしょう。

亜鉛欠乏症による脱毛とAGAの違い

〇亜鉛欠乏症による脱毛

亜鉛は成人の体内に約2gほどしか含まれていません。しかし、健やかな体に必要不可欠な栄養素であるため、亜鉛が不足することで以下のようにさまざまな症状が引き起こされます。

  • 味覚障害
  • 食欲不振
  • 皮膚炎
  • 創傷治癒の遅延
  • 脱毛
  • 下痢
  • 鉄欠乏性貧血
  • 性腺発育不全
  • 活性酸素障害
  • 精子の形成障害、男性不妊
  • 無欲化、情緒不安定、行動異常、記憶障害、うつ症状など精神異常
  • 小児では成長遅延
    など

亜鉛が不足すると、ケラチンを含むさまざまなタンパク合成に障害が生じます。また、亜鉛は髪の毛や皮膚などを構成する上皮性組織の形成に必須であるため、不足することで脱毛を引き起こすことがあります。しかし亜鉛欠乏症に伴う脱毛の場合は、さまざまな症状を伴うことが多い点、びまん性脱毛を生じる点がAGAと異なる点といえます。

〇亜鉛欠乏症による脱毛とAGAの違い

亜鉛欠乏症による脱毛とAGAによる脱毛は、原因だけでなく脱毛する場所などにも違いがあります。

亜鉛欠乏症によって起こる脱毛は、機械的刺激(※)を受けやすい後頭部から始まり、徐々に頭部全体に広がっていくとされています。さらに、頭部だけでなく眉毛なども抜け落ち、全脱毛状態になる可能性も。また、他にも頭部の一部分のみが脱毛する「円形脱毛症」の患者では体内の亜鉛濃度が低い例もあり、亜鉛の欠乏によって円形脱毛症が起こるケースもあると考えられています。

※圧力、音などによる刺激。エネルギーによって分類される、感覚の種類の一つ。

一方、AGAの場合は前頭部や頭頂部から抜け毛が起こるといわれています。AGAの原因である悪玉男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが体内の酵素「5αリダクターゼ」と結合することで生成されます。

通常、このDHTは体中に存在する男性ホルモン受容体の「アンドロゲンレセプター」と結合することで髭などの体毛に対して成長因子を刺激し、毛を太く成長させる作用を持ちます。しかし、前頭部や頭頂部などの毛髪に対しては、毛母細胞の分裂を抑制しヘアサイクルにおける成長期を短縮させてしまうため、AGAでは前頭部や頭頂部から抜け毛が始まるとされているのです。

このように亜鉛欠乏症による脱毛とAGAでは脱毛箇所が異なるため、見分けがつきやすいといえるでしょう。しかし素人が正しい判断をすることは困難であり、適切な治療を行うためには医療機関で医師の診察を受けることが必要です。

AGAの治療にも亜鉛は必要?

AGAは男性ホルモンの異変によって引き起こされる脱毛症です。AGAの場合は、フィナステリドやデュタステリドをはじめとするAGA治療薬を使用することが有効ですが、亜鉛を摂取しなくても良いということではありません。

亜鉛は、細胞の新陳代謝に関わる酵素を構成するとても大切な役割を担っています。正常な育毛環境を整えるためだけでなく、健やかな体づくりにも欠かせない栄養素です。したがって、亜鉛の摂取がAGAに直接関与はしていなくても適度に摂取することが推奨されます。

“目安となる摂取量”や“摂取すべき食材”については、以下を参考にしてください。

【亜鉛の食事摂取基準量】

日本人の食事摂取基準(2015年版)では1日の摂取の推奨量は18~69歳の男性で10mg、70歳以上の男性で9mg、18~69歳の女性で8mg、70歳以上女性で7mgとなっています。

また通常の食事による亜鉛の過剰摂取の可能性は低いといえますが、亜鉛の過剰摂取は銅欠乏、貧血、胃の不調などさまざまな健康被害が生じる恐れがあるため、耐容上限量は18~29歳の男性で40mg、30~69歳の男性で45mg、70歳以上の男性で40mg、18歳以上の女性で35mgと設定されています。

これらを踏まえ、年齢やライフステージ別の推奨摂取量を表にまとめています。

■ 男性の摂取基準量(mg)

年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量
0~5(月) 2
6~11(月) 3
1~2(歳) 3 3
3~5(歳) 3 4
6~7(歳) 4 5
8~9(歳) 5 6
10~11(歳) 6 7
12~14(歳) 9 10
15~17(歳) 10 12
18~29(歳) 9 11 40
30~49(歳) 9 11 45
50~64(歳) 9 11 45
65~74(歳) 9 11 40
75以上(歳) 9 10 40

■ 女性の摂取基準量(mg)

年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量
0~5(月) 2
6~11(月) 3
1~2(歳) 2 3
3~5(歳) 3 3
6~7(歳) 3 4
8~9(歳) 4 5
10~11(歳) 5 6
12~14(歳) 7 8
15~17(歳) 7 8
18~29(歳) 7 8 35
30~49(歳) 7 8 35
50~64(歳) 7 8 35
65~74(歳) 7 8 35
70以上(歳) 6 8 30
妊婦(付加量) +1 +2
授乳婦(付加量) +3 +4

※出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

  • 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量
  • 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量
  • 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない
  • 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量

ほとんどの人が必要量を満たす亜鉛摂取量は「推奨量」ですが、日頃の食事から「目安量」を満たしていれば、おおよそ亜鉛不足になる可能性はないとされています。しかし、長期的に競技生活を継続しているスポーツ競技者の場合は厳しいトレーニングによって汗などからの亜鉛排泄が増加し、亜鉛が不足しやすいと考えられているため注意が必要です。

また日常的に栄養バランスの偏った食事をしている方も、亜鉛や亜鉛の吸収を助ける栄養素が足りていない可能性があるため注意した方がよいでしょう。

【亜鉛を多く含む主な食材】

亜鉛の摂取方法は、主に食事からの摂取やサプリメントなどの栄養補助食品を用いる方法が推奨されています。

食事から亜鉛を摂取する場合は、亜鉛含有量が高い食品を摂取する方法が最も効率的です。以下のような亜鉛含有量が多い食材を積極的に活用することで、比較的効率良く亜鉛を摂取できるでしょう。

■ 100gあたりの含有量

  • 牡蠣 (養殖):13.2mg
  • パルメザンチーズ:7.3mg
  • ピュアココア:7.0mg
  • ぶた(肝臓):6.9mg
  • 牛(肩ロース):6.4mg
  • 抹茶:6.3mg
  • タラバガニ(水煮缶):6.3mg
  • ごま(炒り):5.9mg
  • するめ:5.4mg
  • 凍り豆腐:5.2mg
  • ラム(肩):5.0mg
  • アーモンド(フライ):4.4mg
  • 鶏卵(卵黄 生):4.2mg
  • 焼きのり:3.6mg
  • エンドウ(塩豆):3.6mg
  • 小麦(強力粉):3.0mg

正しく栄養を摂取し薄毛予防に適した体を目指す

亜鉛はさまざまな作用を持ち、人体には欠かせない栄養素のひとつです。適切な量に気を配りながら正しく摂取することで、薄毛予防に必要不可欠である健康的な体づくりを促せる可能性があります。まずは栄養素から体の健康を見直して、すこやかな髪の毛を育む環境を少しずつ整えましょう。

ただし、頭頂部や前頭部の薄毛が進行している場合はAGA(男性型脱毛症)を発症している可能性があるため、早めに診察を受けることをお勧めします。まずはAGA治療専門の病院やクリニックに相談してみるとよいでしょう。

薄毛治療を専門とするAGAヘアクリニックでは、薄毛に関する診察や相談を無料で行なっております。遠方から通うのが困難な方のために、テレビ電話を使用したオンライン診療も可能です。脱毛の原因を見極め、的確な治療方法を提案することで一刻も早いお悩みの解消をお手伝いいたします。抜け毛や薄毛が気になる方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

出典・参考URL

アクセスランキング