【医師が教える】後頭部の薄毛とAGAの関係は? 原因と対処法を解説
薄毛に悩む成人男性の多くはAGA(男性型脱毛症)であるといわれています。AGAは頭頂部や前頭部に薄毛の症状が現れるのが特徴とされ、“AGAである”と見分ける一つのポイントとされています。では、後頭部に薄毛の症状が現れた場合はAGAではないのでしょうか?
今回のAGAタイムスでは後頭部に起こる薄毛の原因、薄毛を予防するための対策、対処法などをご紹介します。
後頭部の薄毛の原因とは
後頭部の薄毛はAGAでなく他の原因から脱毛が引き起こされている可能性が高くなります。後頭部に薄毛を引き起こす原因には日々の食生活や睡眠、ストレスなどの生活習慣が関係していると考えられます。
忙しい現代社会では手軽に食事ができるファストフードやコンビニ食などが多く利用され、栄養の偏った食生活になりやすい傾向があります。食事から摂取する栄養は髪の毛の生成にも大きく関与するとされ、偏った食事により栄養が不足すると髪の毛の生成に悪影響を及ぼす可能性があります。慢性的な喫煙や飲酒も分解の過程などで髪の毛の生成に必要な栄養が失われ、薄毛を招く要因となり得ます。
また、ストレスにより自律神経が乱れると血行不良を引き起こす場合があります。髪の毛の生成に必要な栄養は血液を介して頭皮まで供給されるため、血流が悪くなれば頭皮までの栄養供給が滞り、育毛を妨げる恐れもあるでしょう。
ストレスがかかると副腎の皮質腎臓の副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。血液中のタンパク質や脂肪を糖へ変換し血糖値を上昇させる働きを持つコルチゾールが多量に分泌されると髪の毛の生成に欠かせないタンパク質を糖へ変換させてしまい、育毛を妨げる可能性があるともいわれています。
慢性的な睡眠不足も薄毛を引き起こす間接的な原因の一つです。睡眠中に特に多く分泌される成長ホルモンは、細胞の修復や代謝の促進など私たちの体を心地よく保つためにさまざまな働きをしてくれています。慢性的な睡眠不足により成長ホルモンの分泌が正常になされないと、髪の毛を生成する細胞の働きも妨げてしまう場合があります。また、慢性的な睡眠不足はストレスの要因にもなる可能性があります。
- 【後頭部とは?】
- 後頭部とは、頭部のうち頭の後方に盛り上がっているあたりより下にある部分を指します。後頭部の上部が頭頂部、後頭部の横左右に位置する部分は側頭部と呼ばれています。
後頭部の薄毛はAGAの可能性が低い
成人男性の多くが発症しているとされるAGAは頭頂部や前頭部に薄毛の症状が現れるのが特徴とされるため、後頭部に生じる薄毛はAGAである可能性が低いと考えられるでしょう。その理由には5αリダクターゼと呼ばれる酵素が関係しています。
AAGAは男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が、髪の毛の成長周期であるヘアサイクルを乱すことが原因となり発症する脱毛症です。DHTとは男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼと呼ばれる酵素と結合することで生じる、より強力な男性ホルモンです。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類が存在し、特にAGAとの関連性が高いと考えられているのはⅡ型5αリダクターゼです。Ⅱ型5αリダクターゼが多く存在する場所は前頭部や頭頂部とされており、後頭部や側頭部には少ないとされています。そのため、後頭部の薄毛はAGAである可能性が低いと考えられます。
後頭部に起こる脱毛の種類
後頭部に起こる薄毛はAGAではなく、さらには先述した生活習慣が関係していない場合でも現れることがあります。ここでは後頭部に脱毛を生じさせる可能性があるものをいくつかご紹介します。
◯円形脱毛症
円形脱毛症とは、10円玉や500円玉ほどの円形の脱毛班が突如として現れる脱毛症です。円形脱毛症は1箇所のみに脱毛班が生じる「単発型」が一般的ですが、2箇所以上に脱毛班が生じる「多発型」、後頭部や側頭部の生え際に沿って帯状に脱毛する「蛇行型」、頭髪全てが抜け落ちる「全頭型」、眉毛やまつ毛まで抜け落ちてしまう「汎発型」など様々な種類があります。
円形脱毛症が生じる要因としては自己免疫疾患や遺伝、アトピー性皮膚炎、ストレスなどが考えられていますが、原因について未だはっきりと解明されていません。また治療法としてはステロイドを使用した治療や局所免疫療法などが挙げられます。
詳しくはこちらの記事もご参照ください
▶︎【医師コメントつき】円形脱毛症の原因と対策◯機械性脱毛症
別名、圧迫性脱毛症とも呼ばれる機能性脱毛症は強く慢性的な髪の毛の牽引や外部からの物理的な圧迫によって生じてしまう脱毛症です。日々、仕事などで帽子やヘルメットを着用する習慣のある方や長時間同じヘアスタイルで強く引っ張る状態が続く方などに生じやすいとされています。機械性脱毛症は一時的な循環障害であり、原因となる頭皮への圧迫や牽引が収まれば回復すると考えられています。
◯瘢痕(はんこん)性脱毛症
瘢痕性脱毛症は火事や事故などの外傷や、がんや膠原病などが原因で毛根が破壊されてしまうことで永久に髪の毛が生えてこなくなる脱毛症です。治療法としては植毛術や、瘢痕部が広がらないように原因に応じたステロイド局所注射、外用薬、内服薬などが用いられます。
◯脂漏(しろう)性皮膚炎による脱毛
脂漏性皮膚炎は頭皮の皮脂分泌が過剰になることで皮膚の常在菌の一つであるマラセチア(カビの一種)が異常繁殖し、頭皮環境の悪化を招く皮膚炎です。主に赤み、かゆみ、湿疹、ふけなど様々な症状をもたらす脂漏性皮膚炎ですが、このような頭皮環境の悪化が脱毛を引き起こす場合があります。
脂漏性皮膚炎が生じる原因としては、ホルモンバランスの乱れや生活習慣の乱れ、誤ったヘアケアなどが関与していると考えられています。症状を改善するためには、原因となる生活習慣を改善するとともに、ステロイドや抗真菌薬によって治療を行うのが一般的です。
◯栄養障害による脱毛
稀にビタミンAの過剰摂取や鉄欠乏症、亜鉛欠乏症などの栄養障害が原因となり脱毛が生じてしまう場合があります。また、栄養障害とまではいかなくとも日々の食事の栄養バランスが悪いと髪の毛の生成に必要な栄養が不足し、間接的に脱毛を招いてしまう可能性も考えられます。
後頭部の薄毛対策
前述した様々な疾患が関与していない場合、後頭部の薄毛の原因は主に生活習慣の中にあると考えられます。食事、睡眠、運動、ストレスなどの観点から、すぐに実践できる後頭部の薄毛対策を紹介します。
◯予防法①:食生活の改善
毎日の食事からバランス良い栄養摂取を心がけましょう。栄養バランスが乱れると頭皮の皮脂量へ影響が出たり、血液循環にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
まず欠かせないのがタンパク質です。髪の毛の大部分は数種類のアミノ酸が結合してできたケラチンと呼ばれるタンパク質で構成されているため、不足しないよう食事から摂取することが大切です。タンパク質は主に卵や肉類、魚類などに多く含まれています。
また亜鉛やビタミン類の摂取も欠かせません。亜鉛はケラチン合成を促進するとされ、髪の毛の生成をサポートします。亜鉛は牡蠣や牛肉の赤身、カシューナッツなどに比較的多く含まれています。
ビタミン類はタンパク質や亜鉛の吸収を手助けする効果が期待できるとされています。例えばビタミンCには亜鉛の吸収率を高める効果が、ビタミンB群は肌の新陳代謝を高め健やかな頭皮を保つ効果が、ビタミンEには細胞の老化を防ぎ髪の毛の生成に適した体を保つ効果が期待できるとされています。
◯予防法②:睡眠不足・質の改善
睡眠時に分泌される成長ホルモンは細胞の修復や代謝を促進する役割があるとされています。慢性的な睡眠不足は成長ホルモンの分泌を減らす恐れがあるため、体の修復が行いきれなくなり、結果として頭皮環境にも悪影響を与える可能性が考えられます。
しかし多様な生活環境がある昨今では、十分な睡眠時間の確保が難しい場合もあるでしょう。その場合は短時間でも睡眠の質を向上させるよう努めることが大切です。睡眠の質を向上させるポイントの一つとして、就寝前に深部体温を上げることが挙げられます。人間の身体は深部体温が下がることで自然な睡眠が誘発されやすくなるため、就寝の2時間ほど前に40度程度のぬるめのお湯で入浴するとよいでしょう。また就寝前のアルコールやカフェインの摂取も睡眠を妨げる原因になり得ますので、控えることをおすすめします。
◯予防法③:運動不足を改善
後頭部の薄毛を予防するための対策としては、適度な運動を取り入れ血流を良くすることも効果的です。適度な運動は脂肪燃焼やストレス解消、基礎代謝の向上など様々な健康効果をもたらし、間接的に育毛に良い頭皮環境を整える効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなど無理のない範囲から取り入れてみましょう。
<詳しくはこちらの記事もご参照ください>
▶︎【医師コメントつき】有酸素運動は薄毛に効果がある?育毛につながる効果とは◯予防法④:慢性的なストレスを改善
先述のとおり、慢性的なストレスは自律神経を乱し血行不良を招く可能性があります。血行不良になると髪の毛の生成に必要な栄養の供給が滞り、育毛を妨げる恐れがあります。自分なりのストレス発散方法を見つけ、なるべくストレスが溜まりすぎないよう工夫するとよいでしょう。
- 【後頭部の薄毛をカバーする髪型】
- 後頭部の薄毛を予防するための対策はもちろん大切ですが、“いま悩んでいる”という方は何よりも薄毛が改善するまでの間にストレスなく快適に過ごせる方法を求めているはず。そこで、ここでは後頭部の薄毛をカバーするためのヘアスタイルについて紹介していきます。
- 女性の場合は、髪の毛をダウンスタイルにしたり後頭部でまとめて結ったりすることで薄毛部分が隠れるため、比較的後頭部の薄毛をカバーしやすいといえます。対して、男性の場合は仕事柄髪の毛を伸ばすことがむずかしい方も少なくないため、上記のような方法は取り入れにくいでしょう。選べる髪型は多くありませんが、おしゃれボウズやソフトモヒカン、ベリーショート、ツーブロックなど後頭部の髪の毛を極力短くできるようなヘアスタイルが選びやすくおすすめです。
- また極端に短いヘアスタイルには抵抗があるという方でも、フェードスタイル(※)をうまく取り入れれば、トップの長さを保ちつつ後頭部だけをうまくカバーすることも可能です。中途半端に長さを残してしまうと髪の毛のある部分とない部分の差が悪目立ちしてしまうので、薄毛部分はスキンフェードでカバーするのがおすすめです。
※: 「ぼかす」という意味をもつフェード(fade)という言葉通り、サイドや後頭部部分をバリカンで短く刈り上げ、トップにいくにつれ長く濃くなる繊細なグラデーションをつくるヘアスタイルのこと。フェードカットとも呼ばれる。なかでも、スキンフェードは一番短い部分が 0mm(=地肌の部分がある)のフェードスタイルを指す
薄毛が気になったらクリニックへ
後頭部の薄毛はAGAが原因でない場合が多く、生活習慣の乱れや頭皮環境の悪化が原因である可能性が高いと考えられます。もし後頭部や側頭部が薄毛になった場合、自分の生活習慣に不規則なところがないか見直してみましょう。
ただし、思い当たる不摂生がないにもかかわらず後頭部や側頭部に薄毛が進行している場合は、まず原因を特定するためにもAGA治療専門クリニックや皮膚科で診察を受けてみることをおすすめいたします。
AGAヘアクリニックは薄毛治療専門の病院です。AGA治療の経験と実績が豊富な医師が在籍しており、性別や年齢関係なく薄毛のお悩みに真摯に対応させていただいております。医師による診察や相談は無料で行なっていますので、ご自身の薄毛がAGAなのか否かを明確にするためにも、ぜひ一度当院へ足を運んでみてください。
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