【医師コメントつき】薄毛の原因は女性ホルモンの減少? ホルモンバランスを整える方法とは
女性の薄毛は加齢や出産、体調不良など、さまざまな体の変化をきっかけに生じることがあります。薄毛は主に男性が罹患する疾患という認識があるため「女性なのに薄毛になるなんて恥ずかしい…」と誰にも相談できずにいたり、「もう二度と生えてこないかもしれない」と不安を感じている女性も少なくないでしょう。
抜け毛や薄毛に悩む女性が少しでも前向きな気持ちになれるよう、今回のAGAタイムスでは女性の薄毛の主な原因とされる女性ホルモンの影響やホルモンバランスを整える方法について説明していきます。
目次
女性ホルモンの減少が薄毛につながる理由
女性ホルモンと薄毛の機序を知る前に、まずは女性ホルモンの基本について考えてみましょう。
そもそも女性ホルモンとは?
体内に100種類以上あるとされているホルモンは、臓器の働きの管理や調整をする物質です。女性ホルモンもそのうちの一つであり、女性らしい容姿の形成、妊娠出産など女性特有の機能を整える作用を持っています。
女性ホルモンは「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があり、それぞれ以下のような役割を担っています。
- ■エストロゲン
- 卵巣内の卵胞(※1)を成熟させ、排卵や受精、妊娠に備えるなど主に妊娠準備のための働きを行ったり、血の巡りを良くして肌にうるおいと弾力を与えたり、自律神経のバランスを整えて気持ちを安定させる役割。
- ■プロゲステロン
- 排卵直後から受精に備えて妊娠しやすい状態をつくり、エストロゲンで厚くなった子宮内膜を維持し流産を防ぐなど、主に妊娠の成立や維持をサポートする働きを持つ。皮脂分泌量を増加させて大人ニキビの原因になったり、メラニン色素を生む細胞を刺激して肝斑を増やしたり、イライラやふさぎ込みなど感情の起伏を激しくさせる作用を及ぼす場合もある。
※1: 卵子を入れている袋
この2種類の女性ホルモンは、周期的に増加・減少を繰り返します。その周期は約28日であり、妊娠しなければ生理を促す働きを行います。
エストロゲンの減少で薄毛になるメカニズム
この2種類の女性ホルモンのうち、エストロゲンには先ほどの特徴のほかに「髪の毛の成長期を延ばす」という働きがあるため、出産後や病気、ストレス、加齢などの影響でエストロゲンが極端に減少すると、髪の毛の成長期が短くなり、細く短い髪の毛が増加してしまうおそれがあります。
このようなヘアサイクルの乱れが続くことで必然的に細く短い髪の毛の割合が増え、頭皮を隠しにくくなり、結果的に薄毛に発展してしまうのです。
女性の薄毛(女性型脱毛症)は男性の薄毛とは異なり、現時点では治療方法が確立していません。そのためまずは予防が重要です。このような事態を避けるためにもエストロゲンの正常な分泌を促す必要がありますが、先述した通り女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、どちらも重要な役割を担っています。
それぞれのホルモンはお互いに影響を与え合うため「どちらかが多ければよい」というものではなく、双方が正しいバランスを保つことで髪の毛はもちろん、健やかな体を維持することができます。
女性ホルモンのバランスが崩れることで起こる体の変化は、薄毛だけに止まりません。その他にどのような影響を与えるのかを確認しておきましょう。
ホルモンバランスの乱れが原因で起こる変化
女性ホルモンは体を正常に機能させるために必要不可欠な物質です。女性ホルモンのバランスが乱れることで、以下のような状態に発展するおそれがあります。
【月経周期の乱れ】
エストロゲンには受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くする役割があり、プロゲステロンには受精卵が着床しやすいよう子宮内膜を整える役割があります。また妊娠せず不要となった子宮内膜を体外に排出する場合にも、女性ホルモンの正常な働きかけが必要になります。
したがって、女性ホルモンのバランスが乱れると生理が遅れたり、あるいは来ないなど、月経周期が乱れて生理不順になる可能性が考えられます。
【自律神経の乱れ】
エストロゲンは自律神経を調整する役割も担っています。女性ホルモンのバランスが崩れて自律神経が乱れるとめまいや肩こり、頭痛、手足のしびれ、手足の冷え、ほてり、動悸、下痢、便秘、胃の不調、不眠などの症状を引き起こします。
40代半ば~50代半ばになると閉経が近づき女性ホルモンが減少することで、このような体の変化が生じることがあります。これらの症状を「更年期障害」と呼びます。
【肌環境の乱れ】
女性ホルモン(エストロゲン)は、皮膚の健康を保つために欠かせない角化細胞や線維芽細胞、メラニン細胞、皮脂腺などにおいて、重要な役割を果たすことが知られています。
そのため女性ホルモンが減少すると、皮膚の弾力性の維持に必要なコラーゲンやエラスチン。そして皮膚の水分保持に重要なヒアルロン酸などの量や質が低下し、肌の老化が進み、たるみやシワ、シミ、くすみができやすくなるといわれています。
【生理機能の悪化】
エストロゲンが減少すると、様々な生理機能が正常に作用しなくなります。具体的には骨密度や脂質代謝、糖質代謝の低下などにより、骨粗しょう症や糖代謝異常、脂質代謝異常、動脈硬化などの心血管疾患の発症率を増加させます。
この他にも倦怠感やイラつきなど精神的な症状、筋肉や関節の痛み、頻尿、残尿感など、女性ホルモンの乱れによって起こる体への悪影響は非常に多いとされています。
ホルモンバランスが乱れる悪習慣
ご紹介したように女性ホルモンのバランスが崩れることで引き起こされる体の変化はさまざまありますが、その原因もまた多様です。加齢や病気による副作用など特別なきっかけだけではなく、乱れた生活習慣の積み重ねもホルモンバランスを崩す原因になります。
【女性ホルモンの減少を助長する悪習慣】
ホルモンバランスの乱れを助長する悪習慣として、以下の6つが挙げられます。
- 運動不足
- 良質な睡眠の不足
- 冷えなど血流の悪化
- 必要な栄養の不足
- 過度な飲酒や喫煙
- ストレスの蓄積
女性ホルモンのバランスを整えるためには、これらの悪習慣を改善しエストロゲンの正常な分泌を促す必要があります。以下からはその対処法を紹介していきますので、手軽に始められるものから生活に取り入れてみてください。
女性ホルモンのバランスを整える方法
〇適度な運動
適度な運動は代謝や血流の改善、ストレス解消などに役立つため、女性ホルモンのバランスを保つためには大切です。有酸素運動やストレッチ、軽い筋肉トレーニングなど体への負担をかけすぎない程度の運動を自分に合ったペースで継続するとよいでしょう。
有酸素運動はウォーキング、サイクリング、エアロビクス、水泳など長時間続けやすいものがお勧めです。ストレッチや体操は筋肉をほぐして血流を促進してくれます。起床時や就寝時に行うとよいでしょう。
筋肉トレーニングはホルモンバランスを保ちやすい体づくりにお勧めです。基礎代謝量を増やし、健やかな体内環境を育むだけでなく、引き締まった体をつくるためにも役立ちます。
〇良質な睡眠時間の確保
体と脳をしっかり休め、体の働きを正常に保つためには良質な睡眠が必要です。まずは十分な睡眠時間を確保すること。また入眠前に心身をリラックスさせて睡眠の質を高めることを意識しましょう。
睡眠には、脳を休めたり成長ホルモンを分泌する「ノンレム睡眠」と体を休めたり記憶の整理を行う「レム睡眠」がありますが、とりわけノンレム睡眠はホルモン分泌により人体の正常な代謝や細胞修復を行うため重要とされています。
ノンレム睡眠は4段階に分かれており、4段階目が最も深い眠りのレベルといわれています。成長ホルモンはノンレム睡眠の3段階目から4段階目のタイミングで分泌が活発になるとされ、入眠からおよそ3時間後にノンレム睡眠の3段階目・4段階目になり、このタイミングで成長ホルモンの1日の分泌量のうち、男性は約60%、女性は約50%が分泌されます。
したがって質の良い睡眠を得るためには、最低でも3時間以上眠る必要があることがわかります。個人差はありますが、おおよそ6~8時間程度の睡眠が理想的な睡眠時間といわれています。
また睡眠時間の確保と同様に、睡眠の質を高めるための準備を行うことも大切です。興奮状態を高める交感神経が優位になった状態では寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなってしまうため、ノンレム睡眠の時間が短縮したり、深達度が浅くなる可能性があります。
具体的には、以下のような準備方法があります。
- 眠りが浅くなるため、就寝直前の飲酒を控える
- 入浴ではなるべくぬるめのお湯にゆっくりつかる
- 就寝前3~4時間以内はできるだけカフェインを避け、軽くあたためた牛乳などを飲む
- ラベンダーなど鎮静作用のある香りを利用する
- 寝室は蛍光灯の昼白色や昼光色のような白い照明をなるべく避け、明るくしすぎない
- 就寝直前はPCやスマートフォンなどを発するブルーライトを避ける
〇体をあたため体温を上げる
体温は女性ホルモンの分泌はもちろん、体のさまざまな生理機能が円滑に活動できているかを推し測るための重要な指標です。体温が36℃未満の「低体温」になってしまうと冷えの症状が出たり、消化不良や疲れやすいといった体の不調が起こりやすくなります。体温が低くなることで血流が悪くなり、卵巣など女性ホルモンの分泌を司る機能の働きを低下させてしまいます。
体温を上げるためにはストレッチやヨガといった軽い運動を習慣づけたり、あたたかい飲み物を意識的に摂取して身体の中まで温めることが重要です。
また体温は良質な睡眠とも密接な関係性があり、人体は体温が下がっていく過程で眠気が増加します。就寝する2時間ほど前にすこし体温を上げておくことで眠りにつく頃には体温が下がり、自然な眠りのリズムを導きやすくなります。
「良質な睡眠時間の確保」でもご紹介した、ぬるめのお湯でゆっくり入浴。また就寝前にかるくあたためた牛乳を飲むなどの方法もお勧めです。ただし体をあたためすぎて熱くなるとかえって体が活動的になってしまうため、就寝前の過度な体温上昇には注意してください。
〇栄養バランスの整った食事
体に備わる機能の正常な働きを維持するためには、バランスの取れたエネルギー摂取が不可欠です。そのためには栄養バランスの整った食事の摂取を心掛けましょう。
公益社団法人日本産科婦人科学会、また公益社団法人日本産婦人科医会は、以下のような方法を取り入れるよう提唱しています。
- 1日3食規則正しい食事をとる
- 朝食はしっかりとり、夜は軽めにおさえる
- 栄養バランスの取れた食事を心掛ける
- 砂糖や塩分・油脂は控えめに。酢を使うなど調味にも工夫する
- 外食や加工食品などはほどほどに控える
- 色々な食品を食べる
さまざまな栄養素をバランスよく摂ることが大前提ですが、大豆イソフラボンやビタミンB6、ビタミンEなどは女性ホルモンのバランスを整えるために意識して摂取したほうがよいといわれています。
〇過度な飲酒や喫煙の制限
過度な飲酒や喫煙は性別に関係なく人体に悪影響を与えますが、とくに女性には注意が必要です。
- ■飲酒を控える
- 飲酒に関しては適量であれば体に大きな影響はなく、むしろ身体によいという報告もあります。しかし女性ホルモンはアルコールの代謝を妨げることから、女性は男性より酒に酔いやすいといわれています。また遺伝的に受け継がれる分解酵素のタイプなど、アルコールへの耐性には個人差があるため、飲酒する際は顔面紅潮や動悸、頭痛などの不調が起こらない範囲を見極めて、アルコールと上手に付き合いましょう。
- 飲みすぎないことはもちろん、食事をとりながらゆっくり飲む。また強いお酒は薄めて飲む。飲み会は早めに切り上げるなど無理のない飲酒習慣を心がけてください。
- ■禁煙
- タバコの煙には約4000種類もの化学物質が含まれており、中でも代表的な有害物質ニコチンは血管を収縮させて体の機能に悪影響を及ぼします。喫煙は肌荒れや肩こり、生理不順や不妊などの原因になったり、骨量を減少させることもあります。当然、女性ホルモンの分泌にも影響があるため女性の喫煙はお勧めできません。
- また妊娠中の喫煙は、酸素や栄養の供給不全を引き起こして胎児にも悪影響を及ぼすことが分かっています。喫煙者が吸い込む主流煙よりも副流煙に含まれる有害物質の方がはるかに多いため、喫煙席には座らないなど受動喫煙への対処も徹底しましょう。
〇適度なストレスの発散
心身相関という言葉があるように、心の健康と体の健康は表裏一体です。ストレスの蓄積は自律神経の乱れや血行不良、免疫力低下、ホルモンバランスの乱れを引き起こします。「ストレス社会」ともいわれる昨今の世の中において、ストレスを受けないことはむずかしいため、せめて定期的にストレス発散する機会を設け、ストレスを貯めないことを意識しましょう。
音楽鑑賞やスポーツ、カラオケ、買い物、旅行など、趣味に没頭できる時間を確保したり、アロマテラピーやマッサージなど、リラックス・リフレッシュ効果があるとされる方法を取り入れてみましょう。自分に適した方法で上手にストレス解消に励んでください。
加齢や疾患の合併症によるホルモンバランスの乱れは、上記のような対処法を取り入れただけでは抜本的な解決にはならない場合もあります。しかし少しでも症状を軽くすることや、悩みを減らすことで心身の負担を減らしてあげることも重要です。まずはすぐにできることから始めてみましょう。
薄毛に関しても悩むことでストレスが増加し、さらにホルモンバランスが乱れ、抜け毛が増加するという悪循環に陥ることもあります。誰にも相談できないことが一番のストレスになりますので、まずはお気軽にご相談ください。
女性ホルモンのバランスを整えて薄毛解消を目指す
冒頭でも説明した通り、女性の薄毛の要因の一つとして、ホルモンバランスの乱れも影響していると考えられています。薄毛対策と聞くと育毛剤や発毛剤などを連想しがちですが、まずは生活習慣を見直してしっかりとホルモンバランスを整えることから意識してみましょう。過度な食事制限によるダイエットや睡眠不足、日々のストレスなど、薄毛のリスクは身近なところに潜んでいるため、まずは何が原因かを見極めて適切な対処を行うことが大切です。
ひと口に「ホルモンバランスの乱れで起こる薄毛」といっても、何が原因になっているかで対処法も変わります。先述の通り、膠原病(こうげんびょう)や甲状腺機能低下症による合併症から起こる薄毛には、この記事で紹介したような方法では対処できません。薄毛になる原因が思い当たらない場合は医療機関を受診して原因を明らかにすることをおすすめします。
女性の薄毛もAGAヘアクリニックにご相談
AGAヘアクリニックでは、女性の薄毛治療も行なっております。当院ではスマホでのオンライン診療も実施しているため、クリニックに行くのが恥ずかしい方でも治療が続けやすい環境です。
また、医師による専門性の高い診療と豊富な治療事例で患者さま一人ひとりの薄毛の悩みをしっかりサポートし、適切な治療法をご提案いたします。カウンセリングは何度でも無料で行なえますので、薄毛が気になる女性はぜひお気軽にご相談ください。
出典・参考URL
- そもそも女性ホルモンとは? ー 市立伊勢総合病院
- 年をとっても大事な女性ホルモンーストレスは大敵 ー 東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チーム
- 女性ホルモンが皮膚のターンオーバーに及ぼす影響の検討 : 表皮細胞の生成・成熟・剥離過程に及ぼすエストラジオールの効果 ー 神戸女学院大学論集
- ステロイドホルモンと脂質代謝ー 琉球大学大学院医学研究科
- エストロゲンと血管 ー 日本生殖内分泌学会
- 「性ホルモン」と「性差のある病気」 ー 公立大学法人福島県立医科大学付属病院
- 女性の生涯健康手帳 ー 公益社団法人 日本産科婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会
- 女性の体のしくみ ー ノーベルファーマ株式会社
- 自律神経失調症 ー 一般社団法人 日本臨床内科医会
- 働く女性のためのヘルスサポートガイド第3版 ー 独立行政法人 労働者健康福祉機構
- 女性ホルモン低下状態における皮膚光老化に対する アロエステロール®の予防効果とそのメカニズムを解明 ー 森永乳業株式会社
- ライフステージからみた女性の健康づくり ー KAOヘルスケアレポート
- いつまでも元気で、素敵な女性でいるために!自分でできるケア! ー 市立伊勢総合病院 産婦人科部長 村松 温美
- 栄養バランスに配慮した食生活にはどんないいことがあるの? ー 農林水産省
- 健康づくりのための睡眠指針2014 ー 厚生労働省健康局
- 健康づくりのための睡眠指針2014に基づいた保健指導ハンドブックの活用効果を高める教材 ー 健康日本21推進全国連絡協議会
- 健康になる!睡眠の科学 ー 日本医学会
- ブルーライトとは ー ブルーライト研究会
- ここちよい睡眠のために ー 睡眠環境科学研究所
- 基礎体温 ー 厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ
- アルコールの吸収と分解 ー e-ヘルスケアネット
- たばこの煙と受動喫煙 ー e-ヘルスケアネット
- 女性とタバコ ー NTT西日本九州病院 呼吸器内科 松岡多香子、たかの呼吸器科内科クリニック 高野義久