【医師が教える】アメリカ食品医薬品局(FDA)に認められた薄毛治療について
医療の進歩によってさまざまな治療法が登場しているAGA(男性型脱毛症)。昨今では、治療薬や施術など多種多様な治療法が存在します。また、効果的といわれる治療法がある一方で健康被害が報告されるケースもあり、AGA治療においては安全性が重要視されています。
厳しい評価基準によって世界的にも信頼度が高い「アメリカ食品医薬品局」(通称FDA)もAGA治療についての評価を提示しています。今回のAGAタイムスでは、そんな米国FDAが認証するAGA治療法について見ていきましょう。
FDA(アメリカ食品医薬品局)とは
FDA(※)は、アメリカ合衆国の政府機関である保健福祉省の配下組織で「連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)」に基づいて食の安全確保や医療品の規制を行なう機関です。規制の対象分野は幅広く、“人々が日常生活で接する機会のある製品”にあたる化粧品や医療機器、動物薬やたばこ、玩具などにおいて、登録・許可や違法品の取り締まりを専門的に行なっています。
※アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)の略称
日本の場合は厚生労働省だけでなく、農林水産省や経済産業省などの官庁も食品の安全や流通などを管轄していますが、米国の場合はFDAによって一括管理されています。責任の所在が明確な分、厳しい審査を行なっており、先進国の中でもひときわ大きな信頼を集める組織といわれています。
FDA認証のAGA治療法
世界的に信頼度が高いとされるFDAに認証されている主なAGA治療法は、以下の通りです。
- ミノキシジル外用薬
- フィナステリド内服薬
- デュタステリド内服薬
- 自毛植毛術
- LLLT(Low level laser therapy)
日本国内のAGA治療でも主流とされる治療法が名を連ねていますが、最後の「LLLT」などは耳にしたことがない方もおられるのではないでしょうか。それぞれどのような治療であるのか、くわしく解説していきます。
〇ミノキシジル外用薬
ミノキシジルは毛細血管を広げ血液の流れをスムーズにするだけでなく、主に髪の毛の成長を促す毛乳頭細胞に働きかけ、ヘアサイクル(毛周期)を延長させる働きを持っています。さらに、毛乳頭細胞からつくられる「発毛因子」の産生を促したり、毛乳頭細胞そのものを増殖させる働きもあることから、ミノキシジルは発毛を促す成分として位置づけられています。
さらに、ミノキシジルには髪の毛を生成する毛母細胞の死滅(アポトーシス)を抑制する働きもあり、これによりヘアサイクルの成長期が延長され、育毛及び脱毛抑制への効果が期待できます。
第1類医薬品として市販されているものから、AGA治療専門クリニックなどで診察を受けたのち処方されるものまで種類もさまざま。頭皮に直接塗布し、皮膚から薬剤を浸透させるミノキシジル外用薬は日本皮膚科学会による「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」(以下、ガイドライン)でも推奨度Aとなっており、AGA治療での有効性が認められています。
- 【ガイドラインの推奨度について】
- ガイドラインでは安全かつ効果的な治療のため、以下のような5つの推奨度が用いられています。
- A:行うよう強く勧める
- B:行うよう勧める
- C1:行ってもよい
- C2:行わないほうがよい
- D:行うべきではない
〇フィナステリド内服薬
AGAとは男性ホルモンの一種「テストステロン」と、体内酵素の「5αリダクターゼ」が結合して生成される悪玉男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」によって抜け毛が進行する疾患です。有効成分「フィナステリド」にはⅡ型5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を抑制する働きがあるため、AGAの根本的な原因を改善する治療法として国内でも認められています。
フィナステリド内服薬は「プロペシア」と呼ばれる既製品の処方や各クリニック独自のフィナステリド含有治療薬の処方など、その種類もさまざま。市販はされていないため、クリニックで診察を受けたのち医師の処方により入手できます。
フィナステリドはガイドラインで男性に対して推奨度Aと高く評価されている一方で、女性への使用は禁忌とされています。女性に対しては効果が認められないばかりか、妊娠中や授乳中の女性への投与は胎児や男児の生殖器の発育に影響を及ぼす可能性があるとされているのです。そのため女性における推奨度はDとされ、使用すべきでないとされています。
〇デュタステリド内服薬
「デュタステリド」はフィナステリドと同様の薬効を持った有効成分です。フィナステリドがⅡ型5αリダクターゼを阻害するのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方の5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を抑制する働きがあります。さらにⅡ型の5αリダクターゼを阻害する効果はフィナステリドの約3倍といわれ、発毛を促す効果はフィナステリドの約1.6倍とされており、より高い有効性が期待できる治療薬です。
「ザガーロ」と呼ばれる既製品の処方や各クリニック独自のデュタステリド含有治療薬など種類はさまざまで、クリニックで診察を受けたのち医師の処方により入手できます。ただし、フィナステリドと同様にガイドラインにおいての推奨度は男性に対してA、女性に対してはDとなっています。
〇自毛植毛術
自毛植毛術は自身の後頭部の毛組織を髪の毛の抜け落ちた部分へ移植する治療です。AGAの症状は主に前頭部や額の生え際、頭頂部周辺が薄毛になるといわれますが、一方で後頭部や側頭部はAGAの影響を受けにくいといわれています。そのため、植毛を行うための毛組織(ドナー)は後頭部から採取するのが一般的です。
自分自身の毛組織を移植するため拒絶反応が少なく、術後の髪の定着率は高いといわれる自毛植毛術ですが、頭部に関わる外科手術のため合併症などのリスクがないとは言い切れません。
しかし自毛植毛術は短期間で薄毛の改善が可能といえます。また男性だけでなく女性も施術が行えるため、ガイドラインでは男性型脱毛症に対して推奨度B、女性型脱毛症に対してはC1とされています。
〇LLLT(Low level laser therapy)
LLLTは薄毛改善に用いられる低出力レーザーです。国内ではあまり馴染みがないかもしれませんが、海外では広く知られている薄毛治療法の一種で、薄毛治療以外にもさまざまな医療に応用され、鎮痛などの用途においても実績があります。
薄毛治療における具体的な効果は頭皮への照射による血行促進、また毛母細胞の活性化です。低出力レーザーによる育毛効果は医学的にも証明されており、薄毛治療としても確立した治療法になりつつあります。
薄毛治療に限らず医薬品はその効果の大きさ故に使用する場合には少なからずリスクが伴いますが、低出力レーザー治療はそれらに比べ効果も比較的穏やかであるため副作用のリスクが少ないことも特徴です。ガイドラインでは推奨度Bとなっています。
FDA認証以外のAGA治療法について
現在の米国FDA認証の主なAGA治療法はここまでに紹介した通りですが、FDAには認証されていないものの効果が期待できるとして、AGA治療に活用される薬もあります。
〇ミノキシジル内服薬
FDAに認証され、日本のガイドラインで推奨度Aとされているミノキシジル外用薬。それと同じ有効成分を含有する「ミノキシジル内服薬」は、薬効も外用薬と同様で、ヘアサイクルの正常化や毛母細胞の活性化を促して発毛に作用します。また内服薬は体内の血中から薬効を発揮するため、外用薬よりも高い発毛効果が期待できると考えられています。
ただし、ミノキシジル内服薬は国内において臨床試験が行われていないことから、ガイドラインでの推奨度はD。薄毛治療薬としては推奨されていません。より高い発毛効果が期待できる反面、副作用のリスクも考えられるため、処方は医師の判断に基づき慎重に行われています。
【ミノキシジル内服薬の個人輸入は危険】
最近ではミノキシジル内服薬に限らず、AGA治療薬を個人輸入する方が増えてきています。その理由としてはクリニックで処方されるよりも安価に高濃度の治療薬が手に入ることが挙げられます。他にも、誰とも顔を合わせることなく購入できる点や医師の処方箋が不要であることも要因と考えられるでしょう。
一見するとメリットが大きいように思える個人輸入ですが、さまざまなリスクが伴います。通常、国内で販売される医薬品は「医薬品医療機器等法」に基づき、有効性及び安全性が確保されていますが、個人輸入の場合は国内でのチェックを通さないため、健康被害や副作用の報告が多数あります。また、販売場所によっては偽造品である可能性もあり、せっかく購入したのに効果が得られないという事態も起こりかねません。
このようなリスクを避けるためにも、いかなる治療薬であっても医療機関での診察を経て、処方を受けた物の使用をおすすめします。
AGA治療は医師のいる専門クリニックへ
これまでにご紹介したAGA治療薬は、AGA治療に特化したクリニックなどで知識や治療実績が豊富な医師により処方されています。適切な服用法の指示や定期的な診療を行いながら治療が行えるため、FDAの認証がない薬でも安心して使用できます。
日本国内のAGA治療専門クリニックにおける治療法は安全性を考慮したうえで行われており、治療内容に関しての大きな問題はないと考えられます。薄毛治療が初めてで心配や不安がある方は、まずはAGA治療専門クリニックへ行き、医師に相談のうえで治療を始めるとよいでしょう。
AGAヘアクリニックでは、患者様お一人おひとりの原因に合わせて適切な治療を提案できます。診察は何回でも無料、さらに万が一当院では治療を施せない症状であっても他の病院を紹介することもできるので、すこしでも薄毛・抜け毛などの症状が気になる場合は気軽に相談しにいらしてください。
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